2011年からFXを始め、一度は退場を経験。あの時の感覚は今でも忘れられません。復活してからは、ロットを大きくせず、細々と続けることを選びました。本記事では、「もう退場しないため」に自分に課している7つのルールをまとめます。
「相場で勝てなかったから退場した」のではない。「自分の感情をコントロールできなかったから退場した」のだ──。
復活してから、振り返って思ったこと
退場後にチャートを見返すと、明らかに「あそこで損切りすればよかった」「あのロットは大きすぎた」という箇所がいくつもありました。でも当時の私は、それを「分かっていてもできなかった」のです。
損失を取り戻したい、自分の判断は正しいはずだ、もう少しで反転するはずだ──そんな心の声に従い続けた結果、気づいたら戻れない場所まで来ていました。
復活してから一番変わったのは、「相場に勝つ技術」ではなく「自分に負けない仕組み」を作ろうとしたことです。以下は、その仕組みとして私が守っている7つのルールです。
このルールが守れていれば、私は退場しなかったと断言できます。退場した時の私は、エントリー時点で「上がる前提」しか持っていませんでした。だから下がった時は、計画になかった事態に直面することになり、感情で意思決定をするしかなくなりました。
今は、新規ポジションを取る前に必ず「ここまで逆行したら切る」というラインを決めています。チャート上のサポートやレジスタンスの少し外側、移動平均線の節目──根拠は何でも良いのですが、「事前に決めておく」ことが本質です。
ポジションを取った後に損切りラインを決めようとすると、必ず「まだ大丈夫」「もう少し見てから」という方向に動いてしまいます。人間の感情はそういう風にできているので、感情が動き出す前に決めるしかないのです。
退場した時の私が分かっていなかったのは、「自分の限界ロット」でした。小さなロットなら冷静に判断できるのに、ロットを上げた途端、損益の数字に振り回され、合理的な判断ができなくなる──。これは性格や知識の問題ではなく、人間の脳が進化的にそういう作りになっているからだと、今は理解しています。
私の場合、含み損が出ても「ああ、また下がってるな」と他人事のように見られるロットが、自分の限界です。そのロットを超えると、ニュースを過剰に気にしたり、夜寝られなくなったり、仕事中もチャートを見たくなったりします。これらは「ロットが自分の許容を超えている」というサイン。
ロットを上げて勝てた時の高揚感は確かに気持ち良いですが、同じロットで負けた時の精神的ダメージは、その何倍にもなります。勝った時の喜びより、負けた時の恐怖の方が大きいのが人間の感情のバランスシートです。だから、平常心を保てる範囲を超えるのは、長期的には必ず損なのです。
退場の最大の原因は、間違いなくナンピンでした。含み損のポジションに対して「平均取得単価を下げれば早く戻せる」と考えて買い増す──。理屈の上では正しい場面もあるかもしれませんが、私の経験上、ナンピンしても幸せになれることはほぼありません。
ナンピンの問題は、技術的にではなく心理的に間違っているところです。ナンピンする時、人は「自分の最初の判断が正しい」という前提を強化しています。でも、含み損が出ているということは、そもそも最初の判断が外れている可能性が高い。その状況でポジションを増やすのは、間違いを倍にする行為に他なりません。
それに、ナンピンが成功したとしても、得られるのは「やっと損益がトントンに戻った」という安堵感だけです。その安堵感を得るために、その間ずっと精神的に消耗し続ける──割に合わない取引だと思います。
リスク許容度とは、「これだけ負けても運用を続けられる」という金額のことです。私の場合、退場した時はこれを意識していませんでした。気づいたら、生活に直接影響する金額まで損失が膨らんでいたのです。
復活してから、トレードを始める前に必ず確認するようにしているのは、次の3点。
特に最後の「資金全体に対するリスク%」は重要です。1回のトレードで失う可能性のある金額は、口座残高の1〜2%以内に収めるのが基本とされています。これを守れば、たとえ10連敗しても口座は20%しか減らない計算になります。逆に、1回で5%・10%リスクを取っていると、数連敗で取り返しのつかない事態になります。
退場前の私は、「絶対」という言葉をよく使っていました。「ここは絶対サポート」「これは絶対反発する」「このニュースなら絶対上がる」──。今振り返ると、絶対という言葉が口に出るタイミングは、ほぼ例外なく逆方向に動いていました。
相場には「絶対」がないことを、頭では誰もが知っています。でも、感情がエスカレートすると、人は確信を求めるようになります。含み損が大きくなるほど「絶対戻る」と自分に言い聞かせるようになるのは、確信がないと耐えられないからです。
今の私は、エントリーする時に「これは外れるかもしれない」という前提を意識的に持つようにしています。外れた時のシナリオを先に考えておくと、いざ逆行した時にも冷静でいられます。むしろ、「外れたらどうなるか」を考えていない時のエントリーは、しないほうが良いとさえ思います。
プロのファンドマネージャーですら、勝率は60%程度と言われています。個人投資家が「絶対勝てる」場面を見つけられるはずがないのです。
FXの個人投資家のうち、長期的に勝ち続ける人は1割にも満たないと言われています。これは厳しい現実ですが、目を逸らしてはいけない事実です。
SNSやブログを見ていると、毎日のように「〇万円勝った」「資金が倍になった」という話が流れてきます。それを見ていると、まるで自分も同じように勝てる気がしてきます。でも、それは「勝った人だけが声を上げている」生存者バイアスです。負けた人は静かに退場していくか、口を閉ざします。
私自身も退場した時、その事実を周りに言えませんでした。今でも言えていない人がたくさんいるはずです。だから、「みんな勝っているように見える」という錯覚を持ちやすいのです。
「大多数は負ける」という前提を持つことは、悲観的になることとは違います。むしろ、「負けるのが普通の世界で、自分はどう生き残るか」を真剣に考えるためのスタートラインです。楽観論は時に危険ですが、現実を直視することは、長く続けるための必要条件だと思います。
このルールは、復活後に最も助けられているものかもしれません。退場前の私は、平日も仕事中にチャートを見て、休日もずっと相場のことを考えていました。でも今は、平日は本業に集中し、土日中心でチャート確認と翌週の戦略を立てる──このリズムを崩さないようにしています。
相場を見続けていると、見ているだけのつもりが、ついエントリーしてしまうものです。特に負けが続いた時、人は「取り返したい」という気持ちで余計なポジションを取りがちです。でも、感情が乱れている時の判断は、ほぼ確実に間違っています。
だから、調子が悪い時は意識的にチャートから離れます。1日休む、1週間休む、ひどい時は1ヶ月休んでも構わない。「休んでいる間にチャンスを逃した」と感じても、冷静さを取り戻せたメリットの方が遥かに大きいからです。
相場は明日も来週も来月も来年もあります。今日エントリーしないことで失われるものは、長期的に見れば本当に小さなものです。逆に、感情でポジションを取って失うものは、口座だけでなくその後の判断力までも奪います。
ここまで読んでくださった方の中には、「当たり前のことばかりじゃないか」と感じた方もいるかもしれません。そう、本当に当たり前のことばかりです。損切りを決める、ロットを抑える、ナンピンしない──FXの本にも、ネット記事にも、何度も書かれていることです。
でも、退場するまでの私は、これらを「知っていた」けれど「守れていなかった」のです。知識として持っていることと、自分の行動として実装できていることの間には、深く広い溝があります。そして、その溝を埋めるのは知識の追加ではなく、自分自身に対する仕組み作りだと思います。
もしこの記事を読んでくださった方の中に、過去の私と同じ状況にいる人がいたら、どうか今すぐチャートを閉じてください。そして、自分のルールを書き出してみてください。それだけで、退場しないための一歩を踏み出せると思います。
細々と、長く、続けていきましょう。それで十分です。