2026年3月2日(月)〜 3月8日(日)| 特集分析

通貨強弱ファンダメンタルズ分析
──原油急騰でCAD独走、ユーロが最弱に沈む

ホルムズ海峡封鎖と原油急騰を受け、産油国通貨カナダドルが指数+1.54で独走。米ドルが安全通貨+高金利で2位に続く一方、エネルギー不安と景気減速のダブルパンチでユーロが最下位に沈んだ「地政学リスク相場」の1週間を、ファンダメンタルズ中心に総括します。



順位 通貨 強弱指数 可視化
1 🇨🇦 CAD(カナダドル) +1.5446
2 🇺🇸 USD(米ドル) +0.9379
3 🇬🇧 GBP(英ポンド) +0.3470
4 🇨🇭 CHF(スイスフラン) -0.0667
5 🇯🇵 JPY(日本円) -0.3588
6 🇦🇺 AUD(豪ドル) -0.4685
7 🇳🇿 NZD(NZドル) -0.9371
8 🇪🇺 EUR(ユーロ) -0.9984
🔥 ホルムズ海峡危機と原油急騰 ⚠️ 地政学リスク最大級

2月28日、米国・イスラエルがイランへの大規模軍事作戦を開始し、イランはホルムズ海峡の封鎖を宣言しました。世界の原油輸送の約2割が通過するこの海峡が事実上閉鎖されたことで、WTI原油は85〜92ドル台へ急騰。Brent原油も80ドル台と大幅上昇し、マーケット全体がリスクオフに転じました。大手海運会社(Maersk、CMA CGM、Hapag-Lloyd)が海峡通過を停止し、保険料も2〜3倍に跳ね上がっています。

💡 ポイント:封鎖が5週間続けば原油100ドルの大台突破も視野に。各国中央銀行の金融政策にも直接影響し、利下げシナリオの後退要因になります。
🏛️ 各国中央銀行の動向 🔄 政策判断が難しい局面

FRB(米国):政策金利3.50〜3.75%を維持。原油高によるインフレ再燃リスクが利下げを困難にしており、3月のドットプロットでは「2026年は利下げ不要」との意見も残存。
BOC(カナダ):政策金利2.25%を据え置き。インフレ動向を見極める姿勢ですが、原油高がカナダ経済の追い風となる構図。
ECB(欧州):主要3金利を据え置き。ユーロ圏の小売売上高が前月比-0.1%と予想を大幅に下回るなど、景気の弱さが目立ちます。
BOJ(日本):政策金利0.75%を維持。委員の一人が1%への利上げを提案するなど正常化への意欲は強いものの、原油高による貿易赤字拡大が円安圧力として重くのしかかっています。
RBNZ(NZ):サプライズの50bp利下げを実施し、市場を驚かせました。NZD売りの直接的なきっかけとなっています。

🇨🇦 CAD(カナダドル)── 第1位 / +1.54 🚀 今週最強通貨──原油が追い風

今週、全通貨中で圧倒的な強さを見せたのがカナダドルです。強弱指数+1.54は2位USDの+0.94を大きく引き離す独走ぶり。最大の追い風は、ホルムズ海峡封鎖による原油急騰です。WTIが85〜92ドル台まで駆け上がったことで、世界有数の産油国であるカナダの通貨に資金が集中しました。CAD/NZD(+2.25%)が全ペア中で最大の上昇率を記録し、CAD/CHF(+1.33%)、EUR/CAD(-2.21%)と全方位でCAD高が進行。中東からの供給が途絶するリスクの中で、カナダは「安全な代替エネルギー供給国」としての地位が鮮明になっています。USD/CADも-0.54%とCADがドルに対しても強含んでおり、単なるドル高の恩恵ではない「CAD固有の強さ」が確認できます。

💡 チェックポイント:原油高が続く限りCAD優位の構図は崩れにくい。ただしQ4のGDPが-0.6%と景気自体は減速しており、原油頼みのリスクには注意。
🇺🇸 USD(米ドル)── 第2位 / +0.94 📈 安全通貨+高金利の二刀流

米ドルは安全通貨需要と高金利の二つのエンジンで堅調な2位。USD/EUR(+1.76%)、USD/NZD(+1.63%)、USD/AUD(+1.22%)、USD/JPY(+1.13%)と幅広い通貨に対してドル高が進行しました。ファンダメンタルズ面ではFRBが政策金利3.50〜3.75%を維持しており、原油高によるインフレ再燃リスクが「利下げ見送り」の観測を強めています。ドットプロットで「2026年は利下げ不要」とする委員も多く、高金利の長期化期待がドルを支えています。一方、USD/CAD(-0.54%)が示すように産油国カナダドルには負けており、「ドル一強」ではなく「CADと並ぶ2トップ」の構図です。

💡 チェックポイント:3月半ばのFOMCが最大の焦点。原油高がインフレ見通しにどう反映されるか──タカ派トーンが強まればドル一段高の可能性も。
🇬🇧 GBP(英ポンド)── 第3位 / +0.35 📈 健闘するポンド

ポンドは今週、堅調な3位をキープしました。GBP/NZD(+1.11%)、GBP/AUD(+0.76%)、GBP/JPY(+0.63%)と下位通貨に対して幅広く買われる展開。英国の建設業PMIが予想を下回るなど景気指標は冴えませんでしたが、BOE(イングランド銀行)の利下げ観測が後退気味であることがポンドの下支えとなっています。北海油田を有することで完全なエネルギー輸入国ほど原油高のダメージを受けにくい点が、EUR(8位)との差を生んだ要因です。ただしGBP/CAD(-1.05%)と対CADでは明確に弱く、上位2通貨とは差が開いています。

💡 チェックポイント:3月半ばのBOE会合が次の焦点。インフレ指標が高止まりすれば「据え置き」継続でポンドの支援材料に。
🇨🇭 CHF(スイスフラン)── 第4位 / -0.07 🔄 安全通貨としてほぼ中立

スイスフランは強弱指数-0.07とほぼゼロの中立ポジションで4位。USD/CHF(+0.83%)、CAD/CHF(+1.33%)、GBP/CHF(+0.36%)と上位3通貨には負けていますが、CHF/NZD(+0.71%)と対NZDでは明確に強いなど、中位に収まる展開でした。地政学リスクの高まりで安全通貨としての需要が入った一方、SNB(スイス国立銀行)の低金利政策が高金利通貨(USD・GBP)との金利差を意識させ、上値を抑制。EUR/CHF(-0.77%)が示すように同じ欧州通貨であるEURに対しては明確にフラン高が進んでおり、「欧州の中の安全通貨」としての面目は保っています。

🇯🇵 JPY(日本円)── 第5位 / -0.36 📉 エネルギー構造が重石

伝統的な安全通貨である円ですが、今週はマイナス圏の5位にとどまりました。USD/JPY(+1.13%)が示すように対ドルでは明確に弱く、GBP/JPY(+0.63%)も上昇。最大の足かせは日本のエネルギー輸入構造です。日本は総エネルギーの87%を化石燃料に依存し、原油輸入の95%が中東産。ホルムズ海峡の封鎖は日本にとって最悪のシナリオであり、貿易赤字の急拡大→円安という連想が働きました。一方、JPY/NZD(+0.54%)と対NZDでは強く、EUR/JPY(-0.55%)も円高方向。BOJの高田委員が1%への利上げを提案するなど金融正常化への意欲が円の底割れを防いでいます。

⚠️ 注意:原油高の長期化は日本のスタグフレーション(景気停滞+物価上昇)リスクを高めます。3月のBOJ金融政策決定会合での姿勢が、円の方向感を左右する最大の材料に。
🇦🇺 AUD(豪ドル)── 第6位 / -0.47 📉 国内指標の弱さが重石

豪ドルはマイナス圏の6位。USD/AUD(+1.22%)、GBP/AUD(+0.76%)と上位通貨に対して明確に売られました。オーストラリアは資源国ではありますが原油の純輸出国ではないため、カナダほど原油急騰の恩恵を受けられません。1月の家計支出が前年比+4.6%と予想(+5.2%)を下回り、貿易収支も26.3億豪ドルと予想(42億豪ドル)を大幅に下回るなど国内経済指標の弱さが売り材料に。AUD/NZD(+0.41%)と対NZDでは辛うじて強い程度で、EUR/AUD(-0.46%)と対EURでは買われるなど、下位グループの中では相対的に持ちこたえています。

🇳🇿 NZD(NZドル)── 第7位 / -0.94 📉 RBNZ大幅利下げが直撃

NZドルはワースト2位の弱さ。最大の要因はRBNZ(ニュージーランド準備銀行)によるサプライズの50bp利下げです。市場は25bpを予想していたため、倍の幅での利下げは「景気の弱さが想定以上」というシグナルとして受け止められました。CAD/NZD(+2.25%)、USD/NZD(+1.63%)、GBP/NZD(+1.11%)と上位通貨に対して全面安。EUR/NZD(-0.09%)がほぼ横ばいだったことから、NZDとEURがともに最弱グループで沈んでいる構図が読み取れます。主要輸出先であるオーストラリアの経済指標も弱く、交易相手国の不振がNZ経済にも波及する懸念が広がっています。

⚠️ 注意:RBNZの大幅利下げは「まだ追加利下げの余地がある」との観測を呼んでおり、NZD売り圧力は短期的に続きやすい環境です。
🇪🇺 EUR(ユーロ)── 第8位 / -1.00 📉 今週最弱──景気+エネルギーの二重苦

ユーロが今週の最弱通貨に沈みました。強弱指数-1.00は8通貨中で唯一のマイナス1超え。EUR/CAD(-2.21%)が全ペア中で最大の下落幅を記録し、EUR/GBP(-1.16%)、USD/EUR(+1.76%)とあらゆる方向でユーロ安が進行しました。ユーロ圏は中東産エネルギーへの依存度が高く、ホルムズ海峡封鎖の影響を最も直接受ける立場です。国内経済指標も弱い内容が続き、建設業PMIが予想を下回り、小売売上高は前月比-0.1%と市場予想(+0.5%)を大幅に裏切る結果に。ECBは主要3金利を据え置きましたが、フランス銀行総裁が「現時点で利上げの理由はない」と発言するなど、景気への配慮が滲みます。

💡 ポイント:ユーロ圏は2022年のロシア・ウクライナ危機でエネルギー調達先を多様化しましたが、中東依存は依然として高い。「景気減速+エネルギー不安」の二重苦が続く限り、ユーロの反発は困難です。EUR/CAD(-2.21%)の大幅下落が象徴するように、産油国通貨との格差は拡大する一方。
産油国CAD vs エネルギー輸入国EUR 📈 明暗くっきり

今週最も鮮明だったのが、産油国と輸入国の二極化です。CAD(1位, +1.54)がエネルギー供給国として独走する一方、中東産エネルギーに依存するEUR(8位, -1.00)は最下位に沈みました。EUR/CAD(-2.21%)が全ペア中で最大の下落幅を記録したことがこの構図を象徴しています。原油高が続く限りこの格差は持続しやすく、「CAD買い・EUR売り」が今週のベストトレードでした。

安全通貨の序列:USD > CHF > JPY 🔄 USDが圧倒的

リスクオフ局面で買われる「安全通貨3兄弟」は、今回USDが2位で圧倒的でした。CHFは4位(-0.07)、JPYは5位(-0.36)とともにマイナス圏に沈んでおり、安全通貨としての恩恵はドルに集中した格好です。CHFは低金利が足かせとなりつつもEUR/CHF(-0.77%)でユーロに勝っており最低限の面目を保ちましたが、JPYはエネルギー輸入構造の脆弱性が重石となり安全通貨3兄弟の中では最も振るわない結果に。

オセアニア通貨の受難──NZD・AUDが低迷 📉 利下げ+リスクオフのダブルパンチ

NZD(7位, -0.94)とAUD(6位, -0.47)はともに弱い側に位置しました。NZDはRBNZの50bp利下げという固有の売り材料が直撃。AUDは国内指標の弱さ(家計支出・貿易収支ともに下振れ)が重石。リスクオフ環境ではキャリートレードの巻き戻し(高金利通貨売り)が起こりやすく、オセアニア通貨にとって不利な地合いが続いています。

📋 今週のファンダメンタルズまとめ

通貨をざっくり3グループに分けると——

🟢 ファンダメンタルズが追い風:CAD(原油急騰+安全な供給国で独走)、USD(安全通貨+高金利維持)、GBP(利下げ後退+北海油田)

🔴 ファンダメンタルズが逆風:EUR(景気指標悪化+エネルギー不安で最下位)、NZD(RBNZ大幅利下げが直撃)、AUD(国内指標の弱さ+中国リスク)

🟡 強弱が拮抗:CHF(安全通貨需要はあるが低金利がネック)、JPY(安全通貨の恩恵 vs エネルギー構造の弱点)

ひと言でまとめると、「ホルムズ海峡危機で産油国通貨が独走、エネルギー輸入国が総崩れ」の1週間でした。EUR/CAD(-2.21%)が全ペア中で最大の下落幅を記録したことが、今週の構図を象徴しています。来週は3月半ばに集中する主要中銀の政策会合(FRB・BOJ・BOE)が最大の焦点。原油高が各国のインフレ見通しにどう反映されるか、スタンスの変化に注目です。

※ 本記事は個人による情報提供を目的として作成されたものであり、特定の金融商品の売買や特定の取引水準を推奨するものではありません。FX取引にはレバレッジに伴う高いリスクがあり、投資元本を上回る損失が発生する可能性があります。投資に関する最終判断はご自身でお願いします。相場は予告なく大きく変動することがあります。余裕資金での投資を心がけましょう。