今週はドルがすべての起点でした。8月19日(水)、米財務省が長期国債の買い戻し(バイバック)の上限を20億ドルから少なくとも40億ドルへ倍増すると発表。約19年ぶりの高水準となる5.34%付近まで上がっていた米30年債利回りが約10ベーシスポイント低下し、ドル指数が急落しました。米ドルは-0.9952で7ペア全敗の完璧な全方位型USD安。その裏で首位に立ったのは、2週連続で7位に沈み「調達通貨として売られ続けている」と書いたばかりのスイスフラン(+0.7321)です。7ペア全勝の完璧な全方位型CHF高で、7位から+6ランクの大逆転となりました。前週に7ペア全勝で首位だったカナダドルは6位へ-5ランク転落し、当サイトの経験則「完璧な全方位型で勝った通貨は翌週に崩れやすい」が6例目でも当てはまっています。一方、ドル安と円安が相殺してドル円は-0.266%とほとんど動かず。下落率の上位9ペアはすべて「USD/○○」か「JPY/○○」という、きわめて分かりやすい構図の1週間でした。
| 順位 | 通貨 | 強弱指数 | 前週 | 可視化 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 🇨🇭 CHF | +0.7321 | 7位 ⬆ | |
| 2 | 🇳🇿 NZD | +0.6912 | 6位 ⬆ | |
| 3 | 🇦🇺 AUD | +0.4019 | 3位 → | |
| 4 | 🇪🇺 EUR | +0.0512 | 4位 → | |
| 5 | 🇬🇧 GBP | -0.0573 | 2位 ⬇ | |
| 6 | 🇨🇦 CAD | -0.0920 | 1位 ⬇ | |
| 7 | 🇯🇵 JPY | -0.7319 | 8位 → | |
| 8 | 🇺🇸 USD | -0.9952 | 5位 ⬇ |
| 順位 | ペア | 変化率 | 方向 |
|---|---|---|---|
| 1 | EUR/JPY | +0.704% | EUR4位 / JPY7位 |
| 2 | GBP/JPY | +0.629% | GBP5位 / JPY7位 |
| 3 | AUD/CAD | +0.479% | AUD3位 / CAD6位 |
| 4 | EUR/CAD | +0.117% | EUR4位 / CAD6位 |
| 5 | EUR/GBP | +0.094% | EUR4位 / GBP5位 |
| 順位 | ペア | 変化率 | 方向 |
|---|---|---|---|
| 最下位 | USD/CHF | -1.508% | USD最弱 / CHF首位 |
| -2 | USD/NZD | -1.467% | USD最弱 / NZD2位 |
| -3 | JPY/CHF | -1.313% | JPY7位 / CHF首位 |
今週の為替をひとつの材料で説明するなら、これです。8月19日(水)、米財務省が長期国債の買い戻し(バイバック)の上限を、1回あたり現行の20億ドルから少なくとも40億ドルへ引き上げると発表しました。対象は残存期間10〜20年と20〜30年、適用は9月9日〜11月4日の予定です。
買い戻しは本来、取引量の減った古い国債を買い入れて国債市場の流動性を支えるための仕組みです。ただ今回は、前日に米30年債利回りが約19年ぶりの高水準となる5.34%付近まで上昇していたタイミングでの発表だったため、市場は「超長期金利を押し下げにいくシグナル」と受け止めました。発表後、30年債利回りは約10ベーシスポイント低下し、ドル指数が急落。ドル円もこの日に週の安値158.01円をつけています。日本経済新聞は「市場に広がる『ベッセント・プット』」「ドル安トレードが再始動か」と報じました。
ややこしいのは、同じ8月19日(水)に公表された7月28〜29日のFOMC議事要旨が、まったく逆方向の内容だったことです。多くの参加者が「インフレが低下しなければ金融引き締めが必要になるだろう」との認識を示し、幾人かの参加者は同会合での利上げが望ましいと考えていたことが明らかになりました。7月会合は政策金利3.50〜3.75%の据え置きを9対3で決定しています。
結果として、バイバックで超長期の利回りが一度は下がった一方、米10年国債利回りは週末にかけて4.74%まで戻しました(レンジ内98.3%、100日間高値4.75%に肉薄)。「超長期は当局が押し下げにいく、中期はインフレ警戒で上がる」というねじれが、同じ日に同時に生まれた形です。
スイスフランは7位から首位へ+6ランク、指数は-0.6874から+0.7321へ1.42ポイントの改善。X/CHFの6ペアすべてが下落し、CHF/NZD(+0.029%)も辛勝して7ペア全勝の完璧な全方位型CHF高です。USD/CHF(-1.508%)は今週28ペアで最大の下落率で、前号で「15ペアで唯一の真のパーフェクトオーダーに復帰」と書いたその形はわずか1週間で消滅しました。
ここは正直に書いておきます。前号では、フランについて「SNBの0%据え置き観測から調達通貨として売られ続けている」「かつての避難先が調達通貨として扱われている点は構造的な変化」と評しました。今週の値動きは、その見立てが少なくとも1週間単位では成り立たなかったことを示しています。SNBの政策に変化があったわけではなく、変わったのはドル側です。ドルが全面安になれば、ドルを買う原資として売られていた低金利通貨は自動的に買い戻される──キャリートレードの巻き戻しという、ごくシンプルな経路です。
ドルが対7通貨で全敗した週に、USD/JPYは-0.266%(158.862円)とほとんど動きませんでした。これは28ペアのうちドル絡み7ペアで最も小さい下落率です。理由は単純で、円が同じくらい売られたから。日本の材料は3つ並びましたが、いずれも円買いにはつながりませんでした。
8月17日(月)の4-6月期GDP速報値は前期比+0.3%・年率+1.1%で3四半期連続のプラス成長ながら、市場予想(年率+2.2%)を下回りました。内需が3四半期ぶりのマイナス寄与(-0.2ポイント)で、外需(+0.5ポイント)が支えるという中身です。8月20日(木)の7月貿易収支は6,345億円の赤字で3か月連続、前年同月(1,563億円)の約4倍に拡大しました。輸出は11兆5,118億円と過去最高でしたが、原油輸入単価が78%高で輸入も過去最高です。そして8月21日(金)の7月全国コアCPIは前年比+1.8%。予想どおりで6月の+1.6%から加速したものの、日銀の2%目標は7か月連続で下回りました。
米国とイランの暫定合意が期限を迎え、延長されなかったことで供給不安が強まり、WTI原油は週間+5.66%の87.06ドル(週の高値89.00ドル)と2週連続で上昇しました。90ドルの大台が視野に入る水準です。
ところがカナダドルは首位から6位へ-5ランク転落(+0.6481→-0.0920)で3勝4敗。原油高を素直に受け取っていません。前号では「前号で『原油=CADの連動は当てにならない』と書いた直後に教科書どおりの連動へ回帰した」と書きましたが、今週はまた外れたことになります。この3週間で連動が「切れ→戻り→また切れ」と往復しており、原油とカナダドルの関係は、少なくとも週足では安定した手がかりにならないと考えたほうが実務的です。
来週最大の注目は8月27日〜29日のジャクソンホール会議で、28日(金)にウォーシュFRB議長の基調講演が予定されています。今週のドル安は「当局が金利を押し下げにいく」という読みに支えられている以上、講演がタカ派に傾けば反動も大きくなりやすいところです。8月26日(水)には米7月PCEデフレーター(FRBが最も重視するインフレ指標)とエヌビディア決算が重なり、-3.93%と急落した日経平均にとっては反発材料にも追い打ちにもなり得ます。8月24日(月)には米国がイラン向けの新たな経済制裁を発表する見込みで、原油と中東関連に直結します。ほかに8月25日の米6月ケースシラー住宅価格指数・7月新築住宅販売件数・8月コンファレンスボード消費者信頼感指数、そして月末には外国為替平衡操作の実施状況(介入実績の公表)が控えます。
2週連続の7位から一気に首位へ。USD/CHF(-1.508%、今週最大の下落率)、JPY/CHF(-1.313%)、CAD/CHF(-0.737%)、GBP/CHF(-0.683%)、EUR/CHF(-0.617%)、AUD/CHF(-0.238%)とX/CHFの6ペアすべてが下落し、唯一分子側に立つCHF/NZD(+0.029%)も辛うじてプラス。7ペアすべてで勝利する完璧な全方位型CHF高です。指数は-0.6874から+0.7321へ1.42ポイントの改善となりました。
材料はSNB側ではなくドル側です。8月19日の米財務省バイバック倍増でドルが全面安となり、低金利のフランで調達してドル資産に向かっていたキャリートレードが巻き戻されたという経路がいちばん素直な説明になります。加えて金+5.56%・銀+6.89%・白金+7.85%と貴金属が急騰し、日経-3.93%・SOX-4.98%の株安も重なりました。CHF/JPY(198.362円、週間+1.28%)はクロス円で最大の上昇となり25日線を回復、前号で「15ペア唯一の真のパーフェクトオーダー」と書いたUSD/CHFの形は1週間で消えています。
6位から2位へ+4ランク、指数は+0.0201から+0.6912へ大きく改善しました。USD/NZD(-1.467%、今週2番目の下落率)、JPY/NZD(-1.220%)、CAD/NZD(-0.687%)、GBP/NZD(-0.656%)、EUR/NZD(-0.537%)、AUD/NZD(-0.299%)で勝ち、敗れたのは首位CHF相手のCHF/NZD(+0.029%)だけの6勝1敗。しかもその差は0.029%と、実質的には引き分けです。
NZD/USDは0.5980(週間+1.49%)と15ペアで最大の上昇となりました。今週のNZドル高に固有の国内材料は確認できておらず、ドル全面安の受け皿としての買いが主因とみるのが妥当です。8月21日のオセアニア市場では豪ドル・NZドルともに対ドル・対円で堅調に推移し、NZD/USDは0.5939から0.5974へ、NZD/JPYは94.46円から94.97円へ上昇しています。
3位を維持し、指数も+0.3430から+0.4019へ小幅改善しました。USD/AUD(-1.205%)、JPY/AUD(-0.960%)、AUD/CAD(+0.479%、今週3番目の上昇率)、GBP/AUD(-0.402%)、EUR/AUD(-0.304%)で勝ち、AUD/NZD(-0.299%)とAUD/CHF(-0.238%)で敗れて5勝2敗。負けた相手は今週の1位と2位だけで、序列どおりの決着です。
AUD/USDは0.7170(週間+1.20%)で4週連続の上昇、AUD/JPY(113.985円、週間+1.01%)は100日線を突破して4本すべての移動平均線の上に出ました。8月11日のRBAが政策金利4.35%で全員一致の据え置きとしつつ、インフレの2〜3%目標中央値への復帰は2027年末まで見込めず追加利上げも辞さないとしたタカ派姿勢が、引き続き下支えになっています。
4位を維持しましたが、指数は+0.1934から+0.0512へ縮小しほぼゼロ近傍です。USD/EUR(-0.903%)、EUR/JPY(+0.704%、今週最大の上昇率)、EUR/CAD(+0.117%)、EUR/GBP(+0.094%)で勝ち、EUR/CHF(-0.617%)、EUR/NZD(-0.537%)、EUR/AUD(-0.304%)で敗れて4勝3敗。変化率TOP5のうち3枠をEUR絡みが占めましたが、それはユーロが強かったからではなく、対戦相手(円・カナダドル・ポンド)が弱かったからです。
テクニカル面での前進は明確でした。EUR/USDは1.1677(週間+0.92%)で、最後の壁だった200日線(1.1629)を突破し4本すべての移動平均線の上へ。3週間かけて「25日線・50日線を回復 → 100日線を回復して下降パーフェクトオーダーが解消 → 200日線を突破」と、教科書どおりの順序で形が整いました。一方でEUR/CHFは0.9351(週間-0.62%)と4週ぶりに反落しています(ただし15ペアで唯一の「真のパーフェクトオーダー」は維持)。
前週2位から5位へ-3ランク後退し、指数も+0.4224からマイナス圏の-0.0573へ転落しました。勝てたのはUSD/GBP(-0.812%)とGBP/JPY(+0.629%)の2ペアだけで、GBP/CHF(-0.683%)、GBP/NZD(-0.656%)、GBP/AUD(-0.402%)、EUR/GBP(+0.094%)、GBP/CAD(-0.007%)で敗れて2勝5敗です。
前週の英4-6月期GDP(前年比+1.2%、予想+1.1%)で+3ランク上昇した勢いは1週間で失速しました。GBP/USDは1.3643(週間+0.80%)で週の高値1.3675が75日間高値を更新していますが、これはドル安によるもので、ポンド自身の強さではありません。GBP/JPY(216.908円、週間+0.60%)は4本すべての移動平均線の上を維持したものの、SMA配列は上昇パーフェクトオーダーから「混在」へ崩れました(ただし25日線215.592円と50日線215.599円の差は0.007円で、「崩れた」というより「並んで止まっている」状態です)。
前週の首位から6位へ-5ランクの転落。指数は+0.6481から-0.0920へ0.74ポイント悪化しました。USD/CAD(-0.806%)、JPY/CAD(-0.563%)、GBP/CAD(-0.007%)で勝ち、CAD/CHF(-0.737%)、CAD/NZD(-0.687%)、AUD/CAD(+0.479%)、EUR/CAD(+0.117%)で敗れて3勝4敗です。
原油は米イラン暫定合意の期限切れで週間+5.66%(87.06ドル)と2週連続の上昇でしたが、カナダドルはこれを受け取っていません。USD/CAD(1.3759、週間-0.81%)は200日線も割り込んで4本すべての移動平均線の下に沈みましたが、これはドル安の結果であってカナダドル自身の強さではなく、実際にAUD/CADとEUR/CADでは負けています。前号で「教科書どおりの連動に戻った」と書いた原油とCADの関係は、1週間でまた外れました。
3週ぶりに最下位を脱しましたが、内容は厳しいままです。勝てたのはUSD/JPY(-0.266%)の1ペアのみで1勝6敗。JPY/CHF(-1.313%)、JPY/NZD(-1.220%)、JPY/AUD(-0.960%)、JPY/CAD(-0.563%)が下落し、EUR/JPY(+0.704%)、GBP/JPY(+0.629%)が上昇しました。指数は-1.0142から-0.7319へ改善しましたが、順位が上がったのは円が買われたからではなく、ドルがそれ以上に売られたからです。
日本の材料は3つ並び、いずれも円買いにつながりませんでした。8月17日(月)の4-6月期GDP速報値は年率+1.1%で予想(+2.2%)を下回り、内需が3四半期ぶりのマイナス寄与。8月20日(木)の7月貿易収支は6,345億円の赤字で3か月連続、前年同月の約4倍に拡大しました(原油輸入単価が78%高)。8月21日(金)の7月全国コアCPIは前年比+1.8%で予想どおり、6月の+1.6%から加速したものの日銀の2%目標を7か月連続で下回っています。クロス円は2週連続で全ペアが上昇しました(CHF/JPY +1.28%、AUD/JPY +1.01%、EUR/JPY +0.72%、GBP/JPY +0.60%、CAD/JPY +0.58%)。
5位から最弱8位へ-3ランク。USD/CHF(-1.508%)、USD/NZD(-1.467%)、USD/AUD(-1.205%)、USD/EUR(-0.903%)、USD/GBP(-0.812%)、USD/CAD(-0.806%)、USD/JPY(-0.266%)と7ペアすべてが下落する完璧な全方位型USD安です。指数-0.9952は、-1.0という「単なる振り子反動を超えた強い動意」の水準にほぼ届いています。
起点は8月19日(水)の米財務省による長期国債バイバック倍増の発表で、約19年ぶり高水準の5.34%付近まで上がっていた米30年債利回りが約10ベーシスポイント低下し、ドル指数が急落しました。同日公表のFOMC議事要旨はタカ派の内容で米10年利回りは週末に4.74%(レンジ内98.3%)まで戻しましたが、ドルの下げは戻りませんでした。8月14日発表の米7月小売売上高-0.6%(予想+0.1%)、8月ミシガン大学消費者態度指数速報51.0(予想55)と、前週末の消費関連指標が弱かったことも背景にあります。
前号で「最下位2席を2週連続で独占」と書いた2通貨が、今週はCHF 1位(+0.7321)とJPY 7位(-0.7319)へ完全に分かれました。グループ平均は+0.0001と、偶然ながらほぼ完全にゼロで相殺しています。同じ「低金利・実質金利マイナス」という条件を持つ2通貨が、順位表の両端に置かれた形です。
USD(8位-0.9952)とCAD(6位-0.0920)でグループ平均-0.54は3グループ中で断然の最下位です。前週は北米2通貨がCAD首位・USD5位と上位・中位を占めていましたから、1週間での立場の逆転になります。USD/CAD(-0.806%)ではカナダドルが勝っており、グループ内の序列はCAD>USDです。
NZD(2位+0.6912)とAUD(3位+0.4019)が隣り合わせで上位に並び、グループ平均+0.55は3グループ中で最強です。前週まで3週連続でAUDとNZDの順位が大きく離れる「分裂」が続いていましたが(fx-31 AUD7/NZD2、fx-32 AUD1/NZD4、fx-33 AUD3/NZD6)、今週は指数差0.2893ポイントまで縮まりました。AUD/NZDは-0.299%と4週ぶりのマイナスで、内部の優劣はNZドル側です。