2026年8月14日〜8月21日(週次レポート)

通貨強弱ファンダメンタルズ分析
──米財務省の一手でドルが0勝7敗、最下位だったフランが首位へ

今週はドルがすべての起点でした。8月19日(水)、米財務省が長期国債の買い戻し(バイバック)の上限を20億ドルから少なくとも40億ドルへ倍増すると発表。約19年ぶりの高水準となる5.34%付近まで上がっていた米30年債利回りが約10ベーシスポイント低下し、ドル指数が急落しました。米ドルは-0.9952で7ペア全敗の完璧な全方位型USD安。その裏で首位に立ったのは、2週連続で7位に沈み「調達通貨として売られ続けている」と書いたばかりのスイスフラン(+0.7321)です。7ペア全勝の完璧な全方位型CHF高で、7位から+6ランクの大逆転となりました。前週に7ペア全勝で首位だったカナダドルは6位へ-5ランク転落し、当サイトの経験則「完璧な全方位型で勝った通貨は翌週に崩れやすい」が6例目でも当てはまっています。一方、ドル安と円安が相殺してドル円は-0.266%とほとんど動かず。下落率の上位9ペアはすべて「USD/○○」か「JPY/○○」という、きわめて分かりやすい構図の1週間でした。

順位 通貨 強弱指数 前週 可視化
1 🇨🇭 CHF +0.7321 7位
2 🇳🇿 NZD +0.6912 6位
3 🇦🇺 AUD +0.4019 3位
4 🇪🇺 EUR +0.0512 4位
5 🇬🇧 GBP -0.0573 2位
6 🇨🇦 CAD -0.0920 1位
7 🇯🇵 JPY -0.7319 8位
8 🇺🇸 USD -0.9952 5位
順位ペア変化率方向
1EUR/JPY+0.704%EUR4位 / JPY7位
2GBP/JPY+0.629%GBP5位 / JPY7位
3AUD/CAD+0.479%AUD3位 / CAD6位
4EUR/CAD+0.117%EUR4位 / CAD6位
5EUR/GBP+0.094%EUR4位 / GBP5位
順位ペア変化率方向
最下位USD/CHF-1.508%USD最弱 / CHF首位
-2USD/NZD-1.467%USD最弱 / NZD2位
-3JPY/CHF-1.313%JPY7位 / CHF首位
下落率の上位9ペアが、すべて「USD/○○」か「JPY/○○」:変化率を小さい順に並べると、USD/CHF(-1.508%)、USD/NZD(-1.467%)、JPY/CHF(-1.313%)、JPY/NZD(-1.220%)、USD/AUD(-1.205%)、JPY/AUD(-0.960%)、USD/EUR(-0.903%)、USD/GBP(-0.812%)、USD/CAD(-0.806%)と、下から9ペア連続でドルか円が分子です。10番目にようやくCAD/CHF(-0.737%)が入ります。今週の変化率ランキングは、実質的に「ドルと円がどれだけ売られたか」の一覧表になっていました。なお上昇率トップのEUR/JPYでも+0.704%と、値幅そのものは決して大きくありません。「大きく上がった通貨がある週」ではなく「大きく下がった通貨が2つあった週」と読むのが正確です。
強い通貨がTOP5に顔を出さない理由:首位CHFと2位NZDは、28ペアの表記上ほとんどのペアで分母側に置かれています(X/CHFが6ペア、X/NZDが6ペア)。そのためフラン高・NZドル高は「上昇率TOP5」ではなく「下落率BOTTOM」のほうに現れます。TOP5に並んだEUR絡み3ペア(EUR/JPY・EUR/CAD・EUR/GBP)は、ユーロが強かったというより円・カナダドル・ポンドが弱かったことの裏返しです。表の見た目に引きずられず、強弱指数と勝敗表で確認する必要がある週でした。
「番狂わせゼロ」の3週連続はならず──ただし番狂わせは28ペア中1件だけ:対7通貨の勝敗はCHF 7勝0敗/NZD 6勝1敗/AUD 5勝2敗/EUR 4勝3敗/GBP 2勝5敗/CAD 3勝4敗/JPY 1勝6敗/USD 0勝7敗。5位GBPと6位CADのところだけ勝ち数が逆転しており、fx-strength-32・33と続いた「勝ち数が順位どおりに1つずつ減る完全序列」は3週で途切れました。ただし逆転を生んだのはGBP/CAD(-0.007%)というただ1ペアで、しかもこれは28ペアのなかで最も動かなかったペアです。実質的には引き分けで、3週間・84ペアで明確な番狂わせは実質ゼロと言ってよい水準でした。

① すべての起点は8月19日──米財務省が国債の買い戻しを倍増

今週の為替をひとつの材料で説明するなら、これです。8月19日(水)、米財務省が長期国債の買い戻し(バイバック)の上限を、1回あたり現行の20億ドルから少なくとも40億ドルへ引き上げると発表しました。対象は残存期間10〜20年と20〜30年、適用は9月9日〜11月4日の予定です。

買い戻しは本来、取引量の減った古い国債を買い入れて国債市場の流動性を支えるための仕組みです。ただ今回は、前日に米30年債利回りが約19年ぶりの高水準となる5.34%付近まで上昇していたタイミングでの発表だったため、市場は「超長期金利を押し下げにいくシグナル」と受け止めました。発表後、30年債利回りは約10ベーシスポイント低下し、ドル指数が急落。ドル円もこの日に週の安値158.01円をつけています。日本経済新聞は「市場に広がる『ベッセント・プット』」「ドル安トレードが再始動か」と報じました。

米ドルの強弱指数は-0.9952で7ペア全敗の完璧な全方位型USD安。前週は5位(+0.0746)でしたから、-3ランクで最弱まで落ちたことになります。金融政策の変更ではなく、国債の需給に関する事務的なアナウンス一本で通貨が全面安になったという点が今週の特徴です。中央銀行の会合を追いかけるだけでは拾えない材料でした。

② 同じ日のFOMC議事要旨はタカ派だった──超長期は下、中期は上のねじれ

ややこしいのは、同じ8月19日(水)に公表された7月28〜29日のFOMC議事要旨が、まったく逆方向の内容だったことです。多くの参加者が「インフレが低下しなければ金融引き締めが必要になるだろう」との認識を示し、幾人かの参加者は同会合での利上げが望ましいと考えていたことが明らかになりました。7月会合は政策金利3.50〜3.75%の据え置きを9対3で決定しています。

結果として、バイバックで超長期の利回りが一度は下がった一方、米10年国債利回りは週末にかけて4.74%まで戻しました(レンジ内98.3%、100日間高値4.75%に肉薄)。「超長期は当局が押し下げにいく、中期はインフレ警戒で上がる」というねじれが、同じ日に同時に生まれた形です。

株式にはこの後者が効きました。8月18日(火)の米国市場でナスダックが-1.33%、半導体関連のSOX指数が-4.98%と大きく下げ、翌19日の日経平均は終値ベースで2,000円超安。週間では-3.93%と、当サイトが追う12銘柄で唯一の大幅安です。金利が上がるとPERの高いグロース株が売られるという教科書どおりの反応で、半導体比率の高い日経が集中的に突かれました。「ドル安で実物資産が買われる」動きと「金利高で株が売られる」動きが、同じ日の同じ材料の別の側面として同時に走ったのが今週です。

③ 2週連続最下位だったフランが首位へ──前号の見立ての訂正

スイスフランは7位から首位へ+6ランク、指数は-0.6874から+0.7321へ1.42ポイントの改善。X/CHFの6ペアすべてが下落し、CHF/NZD(+0.029%)も辛勝して7ペア全勝の完璧な全方位型CHF高です。USD/CHF(-1.508%)は今週28ペアで最大の下落率で、前号で「15ペアで唯一の真のパーフェクトオーダーに復帰」と書いたその形はわずか1週間で消滅しました。

ここは正直に書いておきます。前号では、フランについて「SNBの0%据え置き観測から調達通貨として売られ続けている」「かつての避難先が調達通貨として扱われている点は構造的な変化」と評しました。今週の値動きは、その見立てが少なくとも1週間単位では成り立たなかったことを示しています。SNBの政策に変化があったわけではなく、変わったのはドル側です。ドルが全面安になれば、ドルを買う原資として売られていた低金利通貨は自動的に買い戻される──キャリートレードの巻き戻しという、ごくシンプルな経路です。

補強材料として、今週は金+5.56%(4,624.1ドル、週の高値でそのまま引け)・銀+6.89%・白金+7.85%と貴金属3品目がそろって急騰しています。ドル安と財政不安を背景にした実物資産買いで、フランは伝統的にこの流れと相性のよい通貨です。加えて日経-3.93%・SOX-4.98%という株安もありました。「フランは構造的に弱くなった」のではなく「ドル高局面では調達通貨として売られ、ドル安局面では買い戻される」という、より単純な関係と読み直すのが今週の教訓です。

④ ドル安なのにドル円が動かない──円を売った3つの日本の材料

ドルが対7通貨で全敗した週に、USD/JPYは-0.266%(158.862円)とほとんど動きませんでした。これは28ペアのうちドル絡み7ペアで最も小さい下落率です。理由は単純で、円が同じくらい売られたから。日本の材料は3つ並びましたが、いずれも円買いにはつながりませんでした。

8月17日(月)の4-6月期GDP速報値は前期比+0.3%・年率+1.1%で3四半期連続のプラス成長ながら、市場予想(年率+2.2%)を下回りました。内需が3四半期ぶりのマイナス寄与(-0.2ポイント)で、外需(+0.5ポイント)が支えるという中身です。8月20日(木)の7月貿易収支は6,345億円の赤字で3か月連続、前年同月(1,563億円)の約4倍に拡大しました。輸出は11兆5,118億円と過去最高でしたが、原油輸入単価が78%高で輸入も過去最高です。そして8月21日(金)の7月全国コアCPIは前年比+1.8%。予想どおりで6月の+1.6%から加速したものの、日銀の2%目標は7か月連続で下回りました。

前号で書いた「利上げしても実質金利はマイナス圏を脱しない」という構図に、今週は「貿易赤字という実需の円売り」が上乗せされた形です。日銀の9月利上げはすでに織り込み済みで、CPIが予想どおりでは新しい円買い材料になりません。円は8位から7位へ1ランク改善しましたが、勝てたのは最弱のドル1ペアのみの1勝6敗。順位が上がったのは円が買われたからではなく、ドルがそれ以上に売られたからです。

⑤ 原油は2週連続高でもカナダドルは6位──連動がまた外れる

米国とイランの暫定合意が期限を迎え、延長されなかったことで供給不安が強まり、WTI原油は週間+5.66%の87.06ドル(週の高値89.00ドル)と2週連続で上昇しました。90ドルの大台が視野に入る水準です。

ところがカナダドルは首位から6位へ-5ランク転落(+0.6481→-0.0920)で3勝4敗。原油高を素直に受け取っていません。前号では「前号で『原油=CADの連動は当てにならない』と書いた直後に教科書どおりの連動へ回帰した」と書きましたが、今週はまた外れたことになります。この3週間で連動が「切れ→戻り→また切れ」と往復しており、原油とカナダドルの関係は、少なくとも週足では安定した手がかりにならないと考えたほうが実務的です。

むしろ今週のCADは、原油ではなく「前週に7ペア全勝で首位に立った通貨」という位置づけのほうが効いたように見えます。当サイトが繰り返し確認してきた「完璧な全方位型で勝った通貨は翌週に崩れやすい」という経験則で、fx-28のNZD、fx-30のUSDとAUD、fx-31のJPY、fx-32のAUD(小幅後退)に続く6例目です。なお同じ原油高は、日本の7月貿易赤字が前年の約4倍に膨らんだ直接の原因でもあります。「中東 → 原油 → 日本の貿易赤字 → 円売り」という経路のほうが、今週ははっきり見えました

📅 来週の注目材料(8月24日〜28日)

来週最大の注目は8月27日〜29日のジャクソンホール会議で、28日(金)にウォーシュFRB議長の基調講演が予定されています。今週のドル安は「当局が金利を押し下げにいく」という読みに支えられている以上、講演がタカ派に傾けば反動も大きくなりやすいところです。8月26日(水)には米7月PCEデフレーター(FRBが最も重視するインフレ指標)とエヌビディア決算が重なり、-3.93%と急落した日経平均にとっては反発材料にも追い打ちにもなり得ます。8月24日(月)には米国がイラン向けの新たな経済制裁を発表する見込みで、原油と中東関連に直結します。ほかに8月25日の米6月ケースシラー住宅価格指数・7月新築住宅販売件数・8月コンファレンスボード消費者信頼感指数、そして月末には外国為替平衡操作の実施状況(介入実績の公表)が控えます。

留意点を3つ挙げておきます。第一に、今週7ペア全勝で首位に立ったスイスフランには、前述の経験則がそのまま当てはまります。しかもその強さはSNBの政策ではなくドル安に依存しており、ジャクソンホール次第で足元が入れ替わります。第二に、VIXは15.13(週間+6.18%)と4週ぶりに上昇しましたが、レンジ内位置は6.9%とまだ低水準。日経が-3.93%下げるなかでこの程度ということは、売られたのがハイテク・グロースに限定的だったという意味でもあります。第三に、ドル円は159円台後半から160円が引き続き介入警戒ゾーン。今週の安値158.01円から高値159.778円までの往復が示すとおり、155円〜160円という「当局が引いた箱」の中の値動きが続いています。

🇨🇭 CHF(スイスフラン)── 1位 / +0.7321

前週7位 → 今週1位(+6)

2週連続の7位から一気に首位へ。USD/CHF(-1.508%、今週最大の下落率)、JPY/CHF(-1.313%)、CAD/CHF(-0.737%)、GBP/CHF(-0.683%)、EUR/CHF(-0.617%)、AUD/CHF(-0.238%)とX/CHFの6ペアすべてが下落し、唯一分子側に立つCHF/NZD(+0.029%)も辛うじてプラス。7ペアすべてで勝利する完璧な全方位型CHF高です。指数は-0.6874から+0.7321へ1.42ポイントの改善となりました。

材料はSNB側ではなくドル側です。8月19日の米財務省バイバック倍増でドルが全面安となり、低金利のフランで調達してドル資産に向かっていたキャリートレードが巻き戻されたという経路がいちばん素直な説明になります。加えて金+5.56%・銀+6.89%・白金+7.85%と貴金属が急騰し、日経-3.93%・SOX-4.98%の株安も重なりました。CHF/JPY(198.362円、週間+1.28%)はクロス円で最大の上昇となり25日線を回復、前号で「15ペア唯一の真のパーフェクトオーダー」と書いたUSD/CHFの形は1週間で消えています。

CHFの過去7週推移は「8→6→8→4→7→7→1」。前号でフランについて「調達通貨として扱われている構造的な変化」と評しましたが、今週の反転はその見立てを1週間で覆しました。訂正して書き直すなら、フランの強弱は「安全通貨かどうか」でも「構造変化」でもなく、その週にドルが買われたか売られたかでほぼ決まっているということです。首位に立った以上、来週は「全方位型の勝者は翌週に崩れやすい」という経験則の対象にもなります。

🇳🇿 NZD(ニュージーランドドル)── 2位 / +0.6912

前週6位 → 今週2位(+4)

6位から2位へ+4ランク、指数は+0.0201から+0.6912へ大きく改善しました。USD/NZD(-1.467%、今週2番目の下落率)、JPY/NZD(-1.220%)、CAD/NZD(-0.687%)、GBP/NZD(-0.656%)、EUR/NZD(-0.537%)、AUD/NZD(-0.299%)で勝ち、敗れたのは首位CHF相手のCHF/NZD(+0.029%)だけの6勝1敗。しかもその差は0.029%と、実質的には引き分けです。

NZD/USDは0.5980(週間+1.49%)と15ペアで最大の上昇となりました。今週のNZドル高に固有の国内材料は確認できておらず、ドル全面安の受け皿としての買いが主因とみるのが妥当です。8月21日のオセアニア市場では豪ドル・NZドルともに対ドル・対円で堅調に推移し、NZD/USDは0.5939から0.5974へ、NZD/JPYは94.46円から94.97円へ上昇しています。

NZDの過去7週推移は「1→1→6→2→4→6→2」。7月中旬までの3週連続首位のあとは、2位と6位を行き来する振れの大きい状態が続いています。8月5日発表の4-6月期失業率5.6%(約10年ぶりの高水準)が示した労働市場の緩みは変わっておらず、今週の2位は国内要因というよりドル安の反射と考えたほうが安全です。指数+0.6912は首位CHFとの差わずか0.0409ポイントで、実質的には首位と並んだ週でもありました。

🇦🇺 AUD(豪ドル)── 3位 / +0.4019

前週3位 → 今週3位(±0)

3位を維持し、指数も+0.3430から+0.4019へ小幅改善しました。USD/AUD(-1.205%)、JPY/AUD(-0.960%)、AUD/CAD(+0.479%、今週3番目の上昇率)、GBP/AUD(-0.402%)、EUR/AUD(-0.304%)で勝ち、AUD/NZD(-0.299%)とAUD/CHF(-0.238%)で敗れて5勝2敗。負けた相手は今週の1位と2位だけで、序列どおりの決着です。

AUD/USDは0.7170(週間+1.20%)で4週連続の上昇、AUD/JPY(113.985円、週間+1.01%)は100日線を突破して4本すべての移動平均線の上に出ました。8月11日のRBAが政策金利4.35%で全員一致の据え置きとしつつ、インフレの2〜3%目標中央値への復帰は2027年末まで見込めず追加利上げも辞さないとしたタカ派姿勢が、引き続き下支えになっています。

AUDの過去7週推移は「4→3→2→7→1→3→3」。8通貨のなかで今週唯一、順位も指数も動きが小さい通貨でした。オセアニアは3週続いた分裂が解消し、NZD 2位・AUD 3位と隣り合わせで上位に並んでいます。ただしAUD/NZDは4週ぶりのマイナス(-0.299%)で、内部の優劣はNZドル側に傾きました。

🇪🇺 EUR(ユーロ)── 4位 / +0.0512

前週4位 → 今週4位(±0)

4位を維持しましたが、指数は+0.1934から+0.0512へ縮小しほぼゼロ近傍です。USD/EUR(-0.903%)、EUR/JPY(+0.704%、今週最大の上昇率)、EUR/CAD(+0.117%)、EUR/GBP(+0.094%)で勝ち、EUR/CHF(-0.617%)、EUR/NZD(-0.537%)、EUR/AUD(-0.304%)で敗れて4勝3敗変化率TOP5のうち3枠をEUR絡みが占めましたが、それはユーロが強かったからではなく、対戦相手(円・カナダドル・ポンド)が弱かったからです。

テクニカル面での前進は明確でした。EUR/USDは1.1677(週間+0.92%)で、最後の壁だった200日線(1.1629)を突破し4本すべての移動平均線の上へ。3週間かけて「25日線・50日線を回復 → 100日線を回復して下降パーフェクトオーダーが解消 → 200日線を突破」と、教科書どおりの順序で形が整いました。一方でEUR/CHFは0.9351(週間-0.62%)と4週ぶりに反落しています(ただし15ペアで唯一の「真のパーフェクトオーダー」は維持)。

EURの過去7週推移は「6→5→4→3→3→4→4」8週連続で3〜6位の中位圏に収まり、8通貨で最も振れ幅の小さい通貨という位置づけが続いています。今週も上位3通貨には全敗、下位3通貨には全勝という、きれいに中間的な内容でした。

🇬🇧 GBP(英ポンド)── 5位 / -0.0573

前週2位 → 今週5位(-3)

前週2位から5位へ-3ランク後退し、指数も+0.4224からマイナス圏の-0.0573へ転落しました。勝てたのはUSD/GBP(-0.812%)とGBP/JPY(+0.629%)の2ペアだけで、GBP/CHF(-0.683%)、GBP/NZD(-0.656%)、GBP/AUD(-0.402%)、EUR/GBP(+0.094%)、GBP/CAD(-0.007%)で敗れて2勝5敗です。

前週の英4-6月期GDP(前年比+1.2%、予想+1.1%)で+3ランク上昇した勢いは1週間で失速しました。GBP/USDは1.3643(週間+0.80%)で週の高値1.3675が75日間高値を更新していますが、これはドル安によるもので、ポンド自身の強さではありません。GBP/JPY(216.908円、週間+0.60%)は4本すべての移動平均線の上を維持したものの、SMA配列は上昇パーフェクトオーダーから「混在」へ崩れました(ただし25日線215.592円と50日線215.599円の差は0.007円で、「崩れた」というより「並んで止まっている」状態です)。

GBPの過去7週推移は「2→4→7→5→5→2→5」今週の「番狂わせ」1件はこのポンドで発生しました。5位のGBPが6位のCADに敗れたGBP/CAD(-0.007%)がそれで、28ペアで最も動かなかったペアです。順位が5位でも指数はほぼゼロ、勝敗も2勝5敗と、順位・指数・勝敗の3つが微妙に食い違う週でもありました。

🇨🇦 CAD(カナダドル)── 6位 / -0.0920

前週1位 → 今週6位(-5)

前週の首位から6位へ-5ランクの転落。指数は+0.6481から-0.0920へ0.74ポイント悪化しました。USD/CAD(-0.806%)、JPY/CAD(-0.563%)、GBP/CAD(-0.007%)で勝ち、CAD/CHF(-0.737%)、CAD/NZD(-0.687%)、AUD/CAD(+0.479%)、EUR/CAD(+0.117%)で敗れて3勝4敗です。

原油は米イラン暫定合意の期限切れで週間+5.66%(87.06ドル)と2週連続の上昇でしたが、カナダドルはこれを受け取っていません。USD/CAD(1.3759、週間-0.81%)は200日線も割り込んで4本すべての移動平均線の下に沈みましたが、これはドル安の結果であってカナダドル自身の強さではなく、実際にAUD/CADとEUR/CADでは負けています。前号で「教科書どおりの連動に戻った」と書いた原油とCADの関係は、1週間でまた外れました

CADの過去7週推移は「3→2→3→6→2→1→6」「完璧な全方位型で勝った通貨は翌週に崩れやすい」という経験則の6例目で、しかも今回は-5ランクとかなり大きな崩れ方です。これまでの5例(fx-28のNZD、fx-30のUSDとAUD、fx-31のJPY、fx-32のAUD)を含め、7ペア全勝の翌週に順位を維持できた通貨はまだ1つもありません。この経験則は、来週の首位CHFにもそのまま適用されます。

🇯🇵 JPY(円)── 7位 / -0.7319

前週8位 → 今週7位(+1)

3週ぶりに最下位を脱しましたが、内容は厳しいままです。勝てたのはUSD/JPY(-0.266%)の1ペアのみで1勝6敗。JPY/CHF(-1.313%)、JPY/NZD(-1.220%)、JPY/AUD(-0.960%)、JPY/CAD(-0.563%)が下落し、EUR/JPY(+0.704%)、GBP/JPY(+0.629%)が上昇しました。指数は-1.0142から-0.7319へ改善しましたが、順位が上がったのは円が買われたからではなく、ドルがそれ以上に売られたからです。

日本の材料は3つ並び、いずれも円買いにつながりませんでした。8月17日(月)の4-6月期GDP速報値は年率+1.1%で予想(+2.2%)を下回り、内需が3四半期ぶりのマイナス寄与。8月20日(木)の7月貿易収支は6,345億円の赤字で3か月連続、前年同月の約4倍に拡大しました(原油輸入単価が78%高)。8月21日(金)の7月全国コアCPIは前年比+1.8%で予想どおり、6月の+1.6%から加速したものの日銀の2%目標を7か月連続で下回っています。クロス円は2週連続で全ペアが上昇しました(CHF/JPY +1.28%、AUD/JPY +1.01%、EUR/JPY +0.72%、GBP/JPY +0.60%、CAD/JPY +0.58%)。

JPYの過去7週推移は「7→8→5→1→8→8→7」ドルが7ペア全敗した週に、円はそのドルにしか勝てませんでした。前号までの「利上げしても実質金利はマイナス圏を脱しない」という構図に、今週は貿易赤字という実需の円売りが上乗せされています。ドル円は158.862円(週間-0.266%)で、水曜の安値158.01円から高値159.778円まで往復。200日線(158.313円)の上は維持したものの、25日線・50日線・100日線はいずれも上方にあり、SMA配列は「混在」のままです。

🇺🇸 USD(米ドル)── 8位 / -0.9952

前週5位 → 今週8位(-3)

5位から最弱8位へ-3ランク。USD/CHF(-1.508%)、USD/NZD(-1.467%)、USD/AUD(-1.205%)、USD/EUR(-0.903%)、USD/GBP(-0.812%)、USD/CAD(-0.806%)、USD/JPY(-0.266%)と7ペアすべてが下落する完璧な全方位型USD安です。指数-0.9952は、-1.0という「単なる振り子反動を超えた強い動意」の水準にほぼ届いています。

起点は8月19日(水)の米財務省による長期国債バイバック倍増の発表で、約19年ぶり高水準の5.34%付近まで上がっていた米30年債利回りが約10ベーシスポイント低下し、ドル指数が急落しました。同日公表のFOMC議事要旨はタカ派の内容で米10年利回りは週末に4.74%(レンジ内98.3%)まで戻しましたが、ドルの下げは戻りませんでした。8月14日発表の米7月小売売上高-0.6%(予想+0.1%)、8月ミシガン大学消費者態度指数速報51.0(予想55)と、前週末の消費関連指標が弱かったことも背景にあります。

USDの過去7週推移は「5→7→1→8→6→5→8」この7週間で首位1回・最弱2回と、8通貨で最も振れ幅の大きい通貨です。今週の下げ幅で目を引くのは、金利が上がっているのにドルが売られた点。前号までの「金利の方向ではなく水準を見る」という補助線に加え、今週は「金利がなぜ動いたか」(財政赤字と国債需給への不安)まで見ないと通貨の方向を読み違えることが示されました。来週のジャクソンホール(8/28 ウォーシュ議長講演)が、この流れを追認するか反転させるかの分岐点になります。

低金利グループ(JPY・CHF)── 最下位2席の独占から、1位と7位へ真っ二つ

グループ平均 +0.0001

前号で「最下位2席を2週連続で独占」と書いた2通貨が、今週はCHF 1位(+0.7321)とJPY 7位(-0.7319)へ完全に分かれました。グループ平均は+0.0001と、偶然ながらほぼ完全にゼロで相殺しています。同じ「低金利・実質金利マイナス」という条件を持つ2通貨が、順位表の両端に置かれた形です。

この分かれ方が、前号の枠組みの限界を示しています。「低金利通貨だから売られる」という説明では、今週のフラン首位を説明できません。差がついたのは、フランがドル資産へのキャリートレードの調達通貨として使われていた(=ドル安で巻き戻しの買いが入る)のに対し、円には貿易赤字という実需の売りが継続的に乗っている点です。CHF/JPYが週間+1.28%とクロス円で最大の上昇となったのは、その差がそのまま出た結果でした。

北米グループ(USD・CAD)── 8位と6位で最弱グループ

グループ平均 -0.54

USD(8位-0.9952)とCAD(6位-0.0920)でグループ平均-0.54は3グループ中で断然の最下位です。前週は北米2通貨がCAD首位・USD5位と上位・中位を占めていましたから、1週間での立場の逆転になります。USD/CAD(-0.806%)ではカナダドルが勝っており、グループ内の序列はCAD>USDです。

北米2通貨がそろって下位に沈むのはfx-strength-27(6/26〜7/3)の「北米総崩れ」以来です。あのときは原油安がCADを直撃しましたが、今週は原油が+5.66%と上昇するなかでの下落で、中身はまったく異なります。今週は「米財務省のアナウンス一本によるドル安」が主因で、カナダドルはそれに引きずられたというより全方位型の勝者に対する反動で下げた、と分けて見るのが実態に近いところです。

オセアニアグループ(AUD・NZD)── 3週続いた分裂が解消し、2位・3位に並ぶ

グループ平均 +0.55

NZD(2位+0.6912)とAUD(3位+0.4019)が隣り合わせで上位に並び、グループ平均+0.55は3グループ中で最強です。前週まで3週連続でAUDとNZDの順位が大きく離れる「分裂」が続いていましたが(fx-31 AUD7/NZD2、fx-32 AUD1/NZD4、fx-33 AUD3/NZD6)、今週は指数差0.2893ポイントまで縮まりました。AUD/NZDは-0.299%と4週ぶりのマイナスで、内部の優劣はNZドル側です。

ただし、この「分裂解消」は金融政策が近づいたからではありません。RBAは追加利上げも辞さないタカ派、RBNZは失業率5.6%で利上げ余地が狭まるという方向の違いはそのままで、両通貨をそろって押し上げたのはドル安という外部要因です。NZD/USD +1.49%が15ペアで最大の上昇、AUD/USD +1.20%が4週連続上昇となったのがその証拠で、ドル安が終われば分裂も戻りやすい点は意識しておきたいところです。
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