2026年8月21日〜8月28日(週次レポート)

通貨強弱ファンダメンタルズ分析
──ジャクソンホールの一言で、ドルが0勝7敗から7勝0敗へ

先週の記事は「米財務省の一手でドルが7ペア全敗」という見出しでした。その1週間後、まったく同じドルが7ペア全勝しています。起点は8月28日(金)、ウォーシュFRB議長が議長として初めて臨んだジャクソンホール会議での講演。目先の利上げ・利下げの道筋ではなく、インフレ抑制と構造改革という長期の課題に軸足を置いた内容が「タカ派」と受け止められ、米10年債利回りは前日比+1.027%の4.72%へ、ドルは全面高になりました。米ドルの強弱指数は-0.9952から+0.8122へ1.81ポイント改善し、8位から首位へ+7ランク0勝7敗から7勝0敗への完全反転は当サイトの記録上初めてです。裏側で、前週7ペア全勝で首位に立ったばかりのスイスフランが7位へ-6ランク転落しました。「完璧な全方位型で勝った通貨は翌週に崩れる」は、これで7例中7例。最弱は8月24日の小売売上高が振るわなかったNZドル(0勝7敗)で、豪ドルだけが7月CPIの上振れを支えにドルに肉薄しています。

順位 通貨 強弱指数 前週 可視化
1 🇺🇸 USD +0.8122 8位
2 🇦🇺 AUD +0.6464 3位
3 🇯🇵 JPY -0.0075 7位
4 🇪🇺 EUR -0.1284 4位
5 🇬🇧 GBP -0.1387 5位
6 🇨🇦 CAD -0.3529 6位
7 🇨🇭 CHF -0.3879 1位
8 🇳🇿 NZD -0.4431 2位
順位ペア変化率方向
1USD/NZD+1.106%USD首位 / NZD最弱
2USD/CHF+1.056%USD首位 / CHF7位
3USD/CAD+1.038%USD首位 / CAD6位
4AUD/NZD+0.990%AUD2位 / NZD最弱
5AUD/CHF+0.862%AUD2位 / CHF7位
順位ペア変化率方向
最下位GBP/AUD-0.689%GBP5位 / AUD2位
-2EUR/AUD-0.677%EUR4位 / AUD2位
-3JPY/AUD-0.627%JPY3位 / AUD2位
上昇率の上位9ペアが、すべて「USD/○○」か「AUD/○○」──先週の鏡写し:変化率を大きい順に並べると、USD/NZD(+1.106%)、USD/CHF(+1.056%)、USD/CAD(+1.038%)、AUD/NZD(+0.990%)、AUD/CHF(+0.862%)、USD/GBP(+0.828%)、AUD/CAD(+0.802%)、USD/EUR(+0.794%)、USD/JPY(+0.740%)と、上から9ペア連続でドルか豪ドルが分子です。10番目にようやくJPY/CHF(+0.377%)が入ります。先週このレポートでは「下落率の上位9ペアがすべてUSD/○○かJPY/○○」と書きました。今週はそれがちょうど反対向きに、しかも同じ9ペアという規模で現れています。先週は「大きく下がった通貨が2つあった週」、今週は「大きく上がった通貨が2つあった週」という、きれいな鏡写しです。
「番狂わせゼロの完全序列」が3週ぶりに復活:対7通貨の勝敗はUSD 7勝0敗/AUD 6勝1敗/JPY 5勝2敗/EUR 4勝3敗/GBP 3勝4敗/CAD 2勝5敗/CHF 1勝6敗/NZD 0勝7敗。勝ち数が順位どおりに1つずつ減り、28ペアに一つの番狂わせもありません。fx-strength-32・33で2週連続成立したあとfx-34で途切れていた「完全序列」が、1週おいて通算3回目の成立となりました。上位は下位全員に勝ち、下位は上位全員に負けた形で、勝ち数(何ペアで勝ったか)と勝ち幅(どれだけ勝ったか)が完全に一致した週です。
首位と2位を分けたのは、28ペア中5番目に動かなかったペア:豪ドルの唯一の黒星はAUD/USD -0.122%、裏を返せばドルの7勝目はUSD/AUD +0.122%です。この0.122%が「7勝0敗」と「6勝1敗」を、そして首位と2位を分けました。28ペアのうち、これより値動きが小さかったのはEUR/GBP(+0.008%)、CAD/CHF(+0.019%)、CAD/NZD(+0.049%)、CHF/NZD(+0.077%)の4ペアだけです。指数でもUSD +0.8122とAUD +0.6464の差は0.1658ポイントにとどまり、「ドル1強」というより「ドルと豪ドルの2強」と読むのが実態に近い週でした。

① 8月28日、ジャクソンホールでウォーシュFRB議長が初講演

今週の為替をひとつの材料で説明するなら、これです。ジャクソンホール会議は8月27日から29日にかけて開かれ、28日(金)の日本時間深夜、ウォーシュFRB議長が議長として初めて講演しました。テーマは「金融革新:決済と政策への含意」です。

もともとウォーシュ議長は先行きの金融政策を示唆するフォワードガイダンスに否定的で、今回も目先の利上げ・利下げの道筋を語る内容ではありませんでした。講演では、コミュニケーション手法の見直し・バランスシート適正化の検証・インフレ測定指標の拡充・デジタル決済への対応・準備預金規模の最適化という5つの改革タスクフォースが進行中であることが示されています。市場はこれを「短期の金利のヒントを求めた市場に、物価安定の長期戦を突きつけた」と受け止め、米10年債利回りは一時4.69%まで上昇、終値は前日比+1.027%の4.72%。ドル円は159.41円まで弱含んだあと160.20円まで上昇して引け、ユーロドルは1.1658ドルから1.1578ドルへ、ポンドドルは1.3599ドルから1.3527ドルへ下落しました。

米ドルの強弱指数は+0.8122で7ペア全勝の完璧な全方位型USD高。前週は-0.9952で7ペア全敗でしたから、1週間で0勝7敗から7勝0敗へ、勝敗が完全に裏返ったことになります。当サイトはこれまで「7勝0敗→0勝7敗」の鏡写し反転を2度記録してきました(fx-22→23のNZD、fx-31→32のJPY)が、負け側から勝ち側への完全反転はこれが初めてです。ドルの過去7週の順位推移は「7→1→8→6→5→8→1」で、直近7週のうち4週が首位か最下位。今のドルは、8通貨のなかで最も落ち着きのない通貨です。

② 先週と今週で、材料の出どころが「財務省」から「FRB」へ入れ替わった

先週このレポートは、8月19日(水)の米財務省による長期国債バイバック倍増がドル全面安の起点だったと書きました。今週のドル全面高の起点は8月28日(金)のFRB議長講演です。9日間で、ドルを動かした当局が財務省からFRBへ入れ替わり、方向も正反対になりました。

金利の動きを並べると分かりやすくなります。先週は「超長期は財務省が押し下げ、中期はインフレ警戒で上昇」というねじれで、金利が上がっているのにドルは全面安でした。今週は米10年債利回りが週半ばに4.62%まで低下したあと、金曜の講演を受けて週間高値4.73%近辺まで戻して引けています。週間の終値では-0.380%とわずかな低下ですが、週末にかけての戻し方がそのままドル高になった形です。レンジ内位置は94.8%(先週98.3%)で、4.6%〜4.75%の狭い範囲での高止まりが続いています。

先週このレポートは「中央銀行の会合を追いかけるだけでは拾えない材料だった」と書きました。今週はその逆向きの検証になっています。同じ「米金利上昇」でも、財政・需給への不安が理由ならドル安、FRBの物価優先姿勢が理由ならドル高。金利の水準(fx-33の教訓)でも、金利の方向(従来の見方)でもなく、「誰が何を理由に金利を動かしたか」を見る必要がある局面が2週続きました。

③ 前週7勝0敗のフランが7位へ──「全方位型の勝者は翌週崩れる」7例目

先週このレポートの主役は、7位から首位へ+6ランク駆け上がったスイスフラン(+0.7321、7ペア全勝)でした。今週のフランは1位から7位へ-6ランク、指数は-0.3879で1勝6敗。勝てたのは最弱のNZドル相手のCHF/NZD(+0.077%)だけです。

先週の記事で、当サイトはこう書きました。「フランの強弱は安全通貨かどうかでも構造変化でもなく、その週にドルが買われたか売られたかでほぼ決まっている」「首位に立った以上、来週は全方位型の勝者は翌週に崩れやすいという経験則の対象にもなる」。今週の結果は、この2点をそのまま裏づけました。SNBの政策には何の変更もありません。変わったのはドル側だけです。USD/CHFは週間+1.011%の0.8093で、先週割り込んだSMA25(0.8084)とSMA50(0.8087)を取り返して4本すべてのSMAの上へ戻りました。

「完璧な全方位型で勝った通貨は翌週に崩れやすい」という経験則は、これで7例目(fx-28 NZD/fx-30 USD・AUD/fx-31 JPY/fx-32 AUD/fx-33 CAD/今週 CHF)7ペア全勝の翌週に順位を維持できた通貨は、7例中ゼロです。今週その7勝0敗を記録したのは米ドルですから、次号ではまず「ドルが崩れたか」を検証することになります。なお唯一の小幅後退例だったfx-32のAUD(1位→3位、プラス圏維持)にはRBAのタカ派姿勢という固有の支えがありました。支え材料の有無をセットで見るという読み方は、今回も有効です。

④ オセアニアが4週ぶりに完全分裂──豪7月CPIとNZ小売売上高

先週は「3週続いた分裂が解消してNZD2位・AUD3位」と書きましたが、今週は2位AUDと8位NZDへ真っ二つ、指数差1.0895ポイントです。今回は外部要因ではなく、両国それぞれの経済指標が分裂の理由になっています。

豪州側は好材料が2つ並びました。8月25日(火)に公表されたRBA議事要旨で、8月会合において追加利上げを支持する意見が複数あったことが明らかになり、翌8月26日(水)の7月CPIは前年比+3.5%(予想+3.3%)、前月比+1.0%(予想+0.9%)、トリム平均+3.6%(予想+3.5%)とすべて市場予想を上回りました。インフレが鈍化していないことがRBAの追加利上げ観測を支え、豪ドル円は113.94円前後から114.20円付近へ上昇しています。8月27日(木)の民間設備投資が前期比減少だった点は逆風でしたが、影響は限定的でした。

NZ側は逆です。8月24日(月)に発表された4-6月期小売売上高が前期比-0.5%と個人消費の弱さを示し、RBNZの追加利上げ観測が後退しました。NZD/USDは週間-1.094%の0.5915で15通貨ペア中最大の下落率先週は同じNZD/USDが+1.489%で15ペア最大の上昇でしたから、こちらも1週間での完全な裏返しです。AUD/NZDは+0.990%で28ペア中4番目の上昇となりました。

⑤ 原油は-4.16%──制裁より「ホルムズ海峡が通れるか」が勝った

8月24日(月)、トランプ政権がイランへの新たな経済制裁を発表しました。核開発などへの関与を理由に60を超える個人・企業に制裁を科すほか、イランとデジタル資産などの取引をした第三国にも制裁を発動する内容で、重点は航空・海運/デジタル資産/金/通貨リアル/兵器関連技術の5分野です。普通なら原油高につながる材料でした。

ところが実際は逆でした。翌8月25日(火)、米国とイランの戦闘終結に向けた交渉が進むとの観測が広がり、ホルムズ海峡の通航回復でペルシャ湾岸からの輸出が急回復し市場が供給過剰に転じるとの見方が優勢になります。WTI原油は週間-4.158%の83.44ドル、週間安値は79.62ドルで80ドルの大台を割り込む場面もありました。市場が見ているのは制裁の見出しではなく、実際に原油が船で運ばれるかどうかだということです。

カナダドルは6位を維持(-0.3529、2勝5敗)で、USD/CADは週間+1.038%と15通貨ペアで最大の上昇率。先週割り込んだSMA200(1.3844)を1週間で回復しました。先週このレポートは「原油+5.66%なのにCADが6位」と連動の切断を指摘しましたが、今週は「原油-4.16%でCADも弱い」と教科書どおりの向きです。ただし順位は6位のまま動いておらず、原油が大きく上下してもカナダドルの相対的な位置は3週間変わっていないという見方もできます。

⑥ VIXは100日間安値を更新──ジャクソンホール週に「恐怖なし」

VIX指数は週間-4.627%の14.43まで低下し、週間安値14.13が100日間安値を更新しました。レンジ内位置は3.3%(先週6.9%)で、SMA5(15.09)・SMA25(15.82)・SMA50(16.51)をすべて下回っています。月間では-30.155%と、当サイトが追う12銘柄で最大の下落率です。

株式は落ち着いた1週間でした。NYダウは+0.531%の53,560ドルで3週ぶりの反発。日経平均は8月26日(水)のエヌビディア決算(売上高962億ドル・前年同期比+106%、次期見通し1,080億ドル)を好感しきれず8月27日に3日ぶり反落しましたが、金曜8月28日は66,405.56円・先週末比+389.20円(+0.59%)で引けています。貴金属は3品目そろって反落し、銀-3.420%・白金-2.851%・金-2.595%。先週の急騰と同じ理屈が、ドル高で反対向きに働きました。

最大級のイベントを通過した週にVIXが100日間安値というのは、市場がイベントを無難に消化したという見方もできる一方、警戒がここまで薄いと悪材料が出たときの跳ね方が大きくなるという意味でもあります。VIXは6月上旬の23台から3か月にわたって切り下がり続けており、来週は米雇用統計が控えています。

🇺🇸 USD(米ドル)── 1位 / +0.8122

前週8位 → 今週1位(+7)

最弱から首位へ+7ランク。USD/NZD(+1.106%、今週最大の上昇率)、USD/CHF(+1.056%)、USD/CAD(+1.038%)、USD/GBP(+0.828%)、USD/EUR(+0.794%)、USD/JPY(+0.740%)、USD/AUD(+0.122%)と7ペアすべてで勝利する完璧な全方位型USD高です。指数は-0.9952から+0.8122へ1.81ポイントの改善となりました。

材料は8月28日(金)のジャクソンホール講演に集約されます。加えて8月26日(水)の米7月PCEデフレーターも下地になりました。総合は前年同月比+3.7%と市場予想の+3.6%を小幅に上回り、コアPCEは+3.3%で予想どおり・前月から横ばい。市場が織り込む9月の利上げ確率は4割弱にとどまる一方、12月までの追加利上げ確率は7割程度まで上がっています。「9月ではないが、年内には」という読みが、週後半の金利上昇とドル高を支えました。

ただし、この首位こそが来週いちばん警戒すべきポジションです。当サイトの記録では、7ペア全勝を達成した通貨が翌週に順位を維持できた例は7例中ゼロ。さらにドルは直近7週で「7→1→8→6→5→8→1」と首位と最下位を行き来しており、2週続けて同じ位置にとどまった週が一度もありません。ドルについては「トレンドが始まった」という読み方より、週ごとに材料の出どころが変わるたびに全面高と全面安を往復していると見るほうが、この2か月の実績には合っています。

🇦🇺 AUD(豪ドル)── 2位 / +0.6464

前週3位 → 今週2位(+1)

6勝1敗で、唯一の黒星はAUD/USD(-0.122%)。ドルが全面高になった週に、そのドル以外の6通貨すべてに勝ったことになります。AUD/NZD(+0.990%)、AUD/CHF(+0.862%)、AUD/CAD(+0.802%)、AUD/GBP(+0.689%)、AUD/EUR(+0.677%)、AUD/JPY(+0.627%)と、勝ち幅も一貫して大きめです。

支えは国内のインフレ指標です。8月26日(水)の7月CPIは前年比+3.5%・前月比+1.0%・トリム平均+3.6%と3つとも市場予想を上回り、前日8月25日のRBA議事要旨で「8月会合において追加利上げを支持する意見が複数あった」ことも判明していました。チャート面での強さは際立っており、AUD/USD(0.7162、週間-0.109%)は下げ幅がごくわずかなうえ、週間高値0.7208が75日間高値を更新AUD/JPY(114.629円、+0.565%)も週間高値114.959円が75日間高値で、SMA200乖離率+3.862%は15ペアで最大のプラスです。さらにEUR/AUD(1.6170、-0.677%)は4週続落で週間安値1.6158が75日間安値、SMA200乖離率-3.267%は15ペアで最大のマイナスでした。

対ドル・対円・対ユーロの3方向すべてで最も強い形を作った通貨です。原油が-4.16%と下げるなかで資源国通貨のうち豪ドルだけが強かったのは、輸出構成で鉄鉱石・金属の比重が高いという違いも効いています。今週4本すべてのSMAの下にあるのはEUR/AUDの1ペアだけで、これも豪ドルの強さの裏返しです。来週は9月2日(水)に豪4-6月期GDP、9月3日(木)に7月貿易収支が控えています。

🇯🇵 JPY(日本円)── 3位 / -0.0075

前週7位 → 今週3位(+4)

7位から3位へ+4ランク。ただし指数は-0.0075とほぼ完全なゼロで、5勝2敗の中身も「ドルと豪ドルには負け、残り5通貨には勝った」というだけです。勝ち幅もJPY/CHF(+0.377%)、JPY/NZD(+0.352%)、JPY/CAD(+0.300%)、JPY/GBP(+0.162%)、JPY/EUR(+0.123%)と小さく、円が買われたわけではありません

実際、USD/JPYは週間+0.740%の160.038円で160円台を回復しています。日本側の材料も円買いにはつながりませんでした。8月27日(木)、氷見野日銀副総裁が埼玉県の金融経済懇談会で講演し、市場は9月利上げを約8割織り込んだうえで「地ならし」を期待しましたが、利上げに前向きな姿勢はにじませたものの明確なシグナルは出ず、円が再び売られました。翌8月28日(金)の8月東京都区部CPIは生鮮食品を除く総合が前年比+1.8%で7か月連続の2%割れ(総合+1.9%、生鮮・エネルギーを除く総合+2.0%)。政府の電気・ガス代補助とコメ価格の下落が効いています。

順位の改善=その通貨が買われた、ではないという典型例です。円は3位まで戻しましたが、ドル円は160円台を回復し、クロス円もAUD/JPY以外は横ばい圏。「利上げは織り込み済み、物価は2%未満」という組み合わせでは、新しい円買い材料になりません。なお先週このレポートが指摘した「中東 → 原油 → 日本の貿易赤字 → 円売り」という経路は、原油が-4.16%と反落したことで入口が反転しています。円にとっては中期的な追い風ですが、今週はジャクソンホールのドル高がそれを上回りました。

🇪🇺 EUR(ユーロ)── 4位 / -0.1284

前週4位 → 今週4位(±0)

4勝3敗で4位。3週連続で4位を維持しており、順位の安定という点では8通貨で最も落ち着いています。勝ったのはEUR/CHF(+0.247%)、EUR/NZD(+0.234%)、EUR/CAD(+0.207%)、EUR/GBP(+0.008%)で、負けたのはEUR/USD(-0.794%)、EUR/AUD(-0.677%)、EUR/JPY(-0.123%)。

ユーロドルは1.1582で週間-0.812%と下落しました。先週このレポートが「最後の壁だった200日線1.1629を突破し4本すべての上へ」と書いたばかりのSMA200(現在1.1631)を、1週間で再び割り込んでいます。週間高値1.1687まで伸びたあと、金曜の講演後に週間安値1.1578まで一気に売られ、ほぼ安値で引けました。SMA25(1.1562)・SMA50(1.1485)・SMA100(1.1571)の3本は維持しています。

価格が移動平均線4本の上に出ることと、線そのものの並びが上向きに変わることは別物です。今週はその差がそのまま出た形で、3週間かけて教科書どおりの順序で積み上げた形の、いちばん上の1枚だけが1週間で剥がれたことになります(SMA配列は依然「混在」のまま)。SMA100(1.1571)を守れるかが来週の分岐点です。EUR/CHF(0.9374、+0.247%)は2週ぶりに反発し、2週連続で15ペア唯一の「真のパーフェクトオーダー」を維持──15ペアのなかで最も形が安定しているのは、依然としてこのペアです。

🇬🇧 GBP(英ポンド)── 5位 / -0.1387

前週5位 → 今週5位(±0)

3勝4敗で5位。EURとの差はわずか0.0103ポイントで、実質的には同値です。両者の直接対決であるEUR/GBP(+0.008%)は28ペアで最も動かなかったペアで、この序列は「ユーロがポンドに勝った」というより「引き分けだった」と書くのが正確でしょう。

ポンドドルは1.3533で週間-0.806%と4週ぶりの下落。それでも4本すべてのSMA(1.3503/1.3419/1.3439/1.3433)を上回る位置は維持しました。乖離率はSMA50で+0.848%、SMA25では+0.220%まで縮小しています。先週の乖離率はSMA50で+1.884%でしたから、1週間で半分以下です。EUR/GBPは0.8558で先週と1ミリも変わらない終値でしたが、中身ではSMA50(0.8553)を上回ったことで下降パーフェクトオーダーが解消され、SMA配列は「混在」に変わりました。

英国発の大きな材料がなかった週で、ポンドの位置はドル高の受け身で決まりました。EURとGBPが4位・5位に並ぶのは3週連続(EURは4→4→4、GBPは5→5→5)で、順位表の中段は今のところ最も動きの乏しいゾーンです。上に伸びすぎた分の調整としては自然な範囲ですが、SMA25(1.3503)まで0.2%しかありません。ここを割り込むかどうかで「押し目」か「戻りの終わり」かが分かれます。

🇨🇦 CAD(カナダドル)── 6位 / -0.3529

前週6位 → 今週6位(±0)

2勝5敗で6位。勝てたのはCAD/NZD(+0.049%)とCAD/CHF(+0.019%)という、いずれも0.05%未満のほぼ引き分けだけです。USD/CAD(+1.038%)は15通貨ペアで最大の上昇率で、先週割り込んだばかりのSMA200(1.3844)を1週間で回復しました。ただしSMA25(1.3946)・SMA50(1.4048)・SMA100(1.3915)は依然として上方にあります。

直接の理由は原油です。8月24日(月)の対イラン追加制裁にもかかわらず、翌25日の米イラン交渉進展観測とホルムズ海峡の通航正常化でWTIは週間-4.158%の83.44ドル、週間安値79.62ドルで80ドル割れ。先週の下げが原油高というカナダ側の材料に支えられていたぶん、その支えが外れた途端に戻されました。

「原油=CAD」の連動は、この4週間で切れ→戻り→また切れ→今週は連動と往復しています。ただし注目したいのは、原油が+5.66%でも-4.16%でも、カナダドルの順位は3週連続で6位から動いていないことです。原油はCADの短期的な値幅を説明できても、8通貨のなかでの相対的な位置はここ数週間ほとんど動いていない──連動を追うより、この事実のほうが実務的な手がかりになりそうです。

🇨🇭 CHF(スイスフラン)── 7位 / -0.3879

前週1位 → 今週7位(-6)

首位から7位へ-6ランク、指数は+0.7321から-0.3879へ1.12ポイントの悪化。1勝6敗で、勝てたのは最弱NZD相手のCHF/NZD(+0.077%)だけです。USD/CHF(+1.056%)、AUD/CHF(+0.862%)、JPY/CHF(+0.377%)、EUR/CHF(+0.247%)、GBP/CHF(+0.231%)、CAD/CHF(+0.019%)と、X/CHFの6ペアすべてが上昇しました。

SNBの政策には何の変化もありません。先週このレポートは「フランの強弱は安全通貨かどうかでも構造変化でもなく、その週にドルが買われたか売られたかでほぼ決まっている」と書き直しました。今週はその読み替えがそのまま機能しています。ドルが全面高になれば、ドル資産へのキャリートレードの調達通貨として使われるフランは自動的に売られる──先週と正反対の向きに、同じ経路が働いただけです。USD/CHF(0.8093、+1.011%)は4本すべてのSMAの上へ戻りましたが、SMA配列は「上昇パーフェクトオーダー」から「混在」へ変わっています

CHFの過去7週推移は「6→8→4→7→7→1→7」。首位と最下位圏を1週で往復する動きが定着しつつあります。フランについては「今週の強弱を説明する」ことに意味があり、「来週の方向を読む」材料としては使いにくいと割り切るのが実務的です。ドルの方向が決まらないかぎり、フランの位置も決まりません。なお貴金属3品目(金-2.595%・銀-3.420%・白金-2.851%)が反落したことも、フランにとっては追い風の消滅でした。

🇳🇿 NZD(NZドル)── 8位 / -0.4431

前週2位 → 今週8位(-6)

2位から最弱へ-6ランク、7ペア全敗の完璧な全方位型NZD安です。NZD/USD(-1.106%)、NZD/AUD(-0.990%)、NZD/JPY(-0.352%)、NZD/GBP(-0.294%)、NZD/EUR(-0.234%)、NZD/CHF(-0.077%)、NZD/CAD(-0.049%)と、7通貨すべてに負けました。

材料は8月24日(月)に発表された4-6月期小売売上高の前期比-0.5%です。個人消費の弱さが確認され、RBNZの追加利上げ観測が後退しました。NZD/USDは0.5915で週間-1.094%と15通貨ペアで最大の下落率。先週は同じNZD/USDが+1.489%で15ペア最大の上昇でしたから、2週続けて「最大の上昇」と「最大の下落」を往復したことになります。4本すべてのSMA(0.5886/0.5811/0.5844/0.5844)の上は辛うじて維持しました。

NZドルの過去7週推移は「1→6→2→4→6→2→8」。当サイトが「振り子の中心通貨」と呼んできた通貨が、6月以来ふたたびその役回りに戻っています。来週は9月2日(水)11時にRBNZの政策金利決定会合が控えており、今週の小売売上高がそこでの判断にどう反映されるかが焦点です。今週0勝7敗を記録した以上、当サイトの経験則からは「反動での上昇」も想定内ですが、fx-22→23、fx-31→32のように両端の全方位型は翌週に入れ替わることも入れ替わらないこともある点は付け加えておきます。

二層構造 ── 「2強」と「団子の6通貨」に0.65ポイントの断層

2強平均 +0.73 / 残り6通貨平均 -0.24

順位表を上から見ていくと、2位AUD(+0.6464)と3位JPY(-0.0075)のあいだに0.6539ポイントという突出した断層があります。1位と2位の差が0.1658、3位から8位までの6通貨は-0.0075〜-0.4431の0.4356ポイント内に収まっていることを考えると、この断層だけが異質です。

つまり今週は「1位から8位へのなだらかな序列」ではなく「USD・AUDの2強 vs 残り6通貨」という構図でした。指数レンジ(最強-最弱)は1.2553ポイントで、先週の1.7273ポイントから縮小しています。fx-33では6位と7位のあいだに0.71ポイントの断層ができる「団子+取り残し」型でしたが、今週は断層が上端に寄った「抜け出し」型。同じ二層構造でも、どちらの側に少数派がいるかで意味がまったく変わります。

北米グループ(USD・CAD)── 首位と6位で完全分裂

グループ平均 +0.23

USD(1位+0.8122)とCAD(6位-0.3529)で指数差1.1651ポイント。先週は8位と6位でグループ平均-0.54の最弱グループでしたから、1週間でグループ平均が0.77ポイント改善したことになります。ただし中身はドルの独り相撲で、カナダドルは6位から動いていません。

USD/CADが15通貨ペアで最大の上昇率(+1.038%)となったのは、ドル高と原油安が同じ向きにそろったためです。北米2通貨は「まとめて動く」というより、ドルは世界の金利・当局姿勢で、カナダドルは原油で、それぞれ別々に動いていると見るのが実態に近いところです。両者が同じ方向を向いた週(fx-27の北米総崩れなど)のほうが、むしろ例外でした。

オセアニアグループ(AUD・NZD)── 4週ぶりの完全分裂、指数差1.09ポイント

グループ平均 +0.10

AUD(2位+0.6464)とNZD(8位-0.4431)で指数差1.0895ポイント。先週は2位・3位に並んで「3週続いた分裂が解消」と書いたばかりですが、1週間でふたたび順位表の両端近くへ引き離されました。AUD/NZDは+0.990%で28ペア中4番目の上昇率です。

重要なのは、今回の分裂は外部要因ではなく両国の指標そのものが理由だったことです。先週の「分裂解消」はドル安という外部要因が両通貨をそろって押し上げただけで、金融政策の方向の違い(RBAはタカ派、RBNZは利上げ余地が狭い)は残ったままでした。先週このレポートは「ドル安が終われば分裂も戻りやすい」と書きましたが、実際にドル高へ振れた今週、その通りに戻っています。オセアニア2通貨は一括りにできず、そろって動く週のほうが例外だと考えたほうが安全です。

欧州3通貨(EUR・GBP・CHF)── 中段に2つ、最下位圏に1つ

グループ平均 -0.22

EUR(4位-0.1284)・GBP(5位-0.1387)・CHF(7位-0.3879)で、グループ平均-0.22は今週唯一のマイナスグループです。EURとGBPは0.0103ポイント差でほぼ同値、3週連続で4位・5位に並んでいます。一方でCHFだけが首位から7位へ崩落し、グループ内の距離が広がりました。

3通貨に共通するのは「ドル高の受け身に回った」という点だけで、内部の序列を決めたのは金利水準です。ユーロとポンドは名目金利がドルより低いぶん押されただけ、フランは0%の調達通貨として能動的に売られた──同じ「対ドルで下落」でも、押されたのか売られたのかで下げ幅が変わりました。EUR/CHF(+0.247%)とGBP/CHF(+0.231%)がともに上昇していることが、その差をそのまま示しています。
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