今週は、ひとことで言えば「先週の巻き戻し」でした。主役は金曜(8/28)のジャクソンホール会議。ウォーシュFRB議長の初講演が「短期の金利の手がかり」ではなくインフレ抑制と構造改革を優先する内容と受け止められ、ドルが全面高になりました。ドル円は159.41円まで下げたあと160.20円まで上昇して引け、終値は160.074円・週間+0.689%で160円台を回復。先週急騰した貴金属は3品目そろって反落し、銀-3.420%・白金-2.851%・金-2.595%。WTI原油はさらに大きく、週間-4.158%の83.44ドルで週間安値79.62ドルと80ドル割れの場面もありました。8/24に米国が対イラン追加制裁(60超の個人・企業)を発表しているにもかかわらず下げたのは、米イラン交渉の進展観測とホルムズ海峡の通航正常化で供給過剰が意識されたためです。暗号資産だけは違う動きで、ビットコインは8/25に約3か月ぶりの8万ドル台、8/26には一時8万1,000ドル台まで上昇し、週間高値12,940,111円が100日間高値を更新。イーサリアムも週間高値408,737円で100日間高値を更新しましたが、8/28の約64億ドル規模のオプション満期を前に失速し、終値の週間騰落はBTC+1.485%・ETH+1.389%にとどまりました。株式は落ち着いた1週間で、NYダウは+0.531%と3週ぶりの反発。日経平均は8/26のエヌビディア決算(売上962億ドル・前年同期比+106%)を好感しきれず8/27に3日ぶり反落したものの、金曜8/28は66,405.56円・先週末比+389.20円(+0.59%)で引けています。そしてVIXは14.43まで低下し、週間安値14.13が100日間安値を更新——レンジ内位置3.3%という「恐怖のない」週末でした。
ドル円は160.074円で週間+0.689%(+1.095円)と上昇し、160円台を回復しました。週間始値158.849円から週間安値158.701円を早々につけたあとはじりじりと上げ、金曜(8/28)のジャクソンホール後に週間高値160.203円——ほぼ高値圏でそのまま引けています。移動平均線との位置関係は先週から大きく改善し、SMA25(159.432円)とSMA100(159.981円)を回復。SMA200(158.399円)と合わせて4本のうち3本の上に出ました。残るのはSMA50(160.850円)だけです。乖離率はSMA25で+0.403%、SMA200で+1.058%。SMA配列は「混在」のままで、線そのものの並びはまだ整っていません。
クロス円は2週続いた「全ペア上昇」が途切れ、上がったのはAUD/JPYだけでした。AUD/JPY(114.629円、週間+0.565%)は週間高値114.959円が、そのまま75日間高値です。つまり今週、直近75営業日で最も高い水準を更新しました。4本すべてのSMA(112.806/112.771/113.188/110.367)の上にあり、SMA200乖離率+3.862%は15ペアで最大のプラスです。残る3ペアは小幅安で、CHF/JPY(197.671円、-0.348%)、GBP/JPY(216.613円、-0.136%)、EUR/JPY(185.406円、-0.121%)。EUR/JPY・GBP/JPYは4本すべてのSMAの上を維持していますが、CHF/JPYは先週と同じくSMA25(197.247円)のみ上で、SMA50(198.838円)・SMA100(200.497円)・SMA200(199.647円)は依然として上方にあります。
EUR/USDは1.1582で週間-0.812%(-0.0095ドル)と下落しました。先週「最後の壁だったSMA200を突破した」と書いたばかりですが、その壁を1週間で再び割り込んでいます。現在の位置はSMA25(1.1562)・SMA50(1.1485)・SMA100(1.1571)の上、SMA200(1.1631)の下。乖離率はSMA200で-0.419%です。週の値動きを見ると、週間始値1.1677から週間高値1.1687までは伸びたものの、金曜のジャクソンホール後に週間安値1.1578まで一気に売られ、ほぼ安値で引けました。チャートでも、最後の1本が大きな陰線になっているのがはっきり見えます。
GBP/USDは1.3533で週間-0.806%(-0.011ドル)と、4週ぶりの下落となりました。先週は週間高値1.3675がそのまま75日間高値になる強さでしたが、今週は週間始値1.3633から週間高値1.3656どまりで、金曜に週間安値1.3527まで売られています。それでも4本すべてのSMA(1.3503/1.3419/1.3439/1.3433)を上回る位置は維持しました。乖離率はSMA50で+0.848%、SMA25では+0.220%まで縮小しています。
先週は「そろって上昇」でしたが、今週は同じ資源国通貨でも明暗が分かれました。NZD/USD(0.5915、週間-1.094%)は15通貨ペアで最大の下落率。週間始値0.5974から週間安値0.5907まで下げ、先週+1.489%で15ペア最大の上昇だったところから真逆になりました。一方のAUD/USD(0.7162、週間-0.109%)は下げ幅がごくわずかで、しかも週間高値0.7208が75日間高値を更新しています。ドルが全面高になった週に75日間の最高値をつけた通貨ペアという点で、豪ドルの強さは際立ちました。両ペアとも4本すべてのSMAの上(AUD/USD:0.7075/0.7011/0.7075/0.6966、NZD/USD:0.5886/0.5811/0.5844/0.5844)は維持しています。
先週ドル安が最もはっきり出たグループが、今週はそっくり反転しました。USD/CAD(1.3902、週間+1.038%)は15ペアで最大の上昇率。先週割り込んだばかりのSMA200(1.3844)を回復し、「4本すべてのSMAの下」からわずか1週間で抜け出しました。原油安がカナダドルの重しになった形です。ただしSMA25(1.3946)・SMA50(1.4048)・SMA100(1.3915)は依然として上方にあります。USD/CHF(0.8093、週間+1.011%)も大きく戻し、先週割り込んだSMA25(0.8084)・SMA50(0.8087)を取り返して4本すべての上へ。ただしSMA配列は「上昇パーフェクトオーダー」から「混在」に変わりました。EUR/CHF(0.9374、週間+0.247%)は2週ぶりに反発し、4本すべてのSMA(0.9348/0.9291/0.9234/0.9226)の上+SMA配列も上昇パーフェクトオーダーを維持——2週連続で15ペア唯一の「真のパーフェクトオーダー」です。
EUR/AUD(1.6170、週間-0.677%)は4週続落で、週間安値1.6158がそのまま75日間安値——直近75営業日の最安値を更新しました。4本すべてのSMA(1.634/1.6383/1.6358/1.6716)の下にあり、SMA200乖離率-3.267%は15ペアで最も大きなマイナスです。今週4本すべてのSMAの下にあるのは、このペアだけになりました(先週はUSD/CADと2ペア)。EUR/GBP(0.8558、週間-0.001%)は先週と1ミリも変わらない0.8558で引けています。ただし中身には変化があり、SMA50(0.8553)を上回ったことで先週まで続いていた下降パーフェクトオーダーが解消し、SMA配列は「混在」になりました(SMA100の0.8605・SMA200の0.8653は依然として上方)。CAD/JPY(115.122円、週間-0.308%)は小幅に反落しましたが、4本すべてのSMA(114.372/114.532/114.957/114.422)の上は維持しています。
日経平均は66,132円です(データ日:8/27)。CSVの週間変動は-85円・-0.128%ですが、これは8/20終値(66,217円)との比較なので注意が必要です。先週の記事の終値66,016円(8/21)と比べれば+116円、さらに金曜8/28の実際の終値は66,405円56銭で、先週末比+389円20銭(+0.59%)の上昇でした。つまり先週-3.93%の急落から、今週は小さく反発しています。週間始値65,428円から週間安値64,609円まで下げる場面もありましたが、週間高値は66,955円。移動平均線ではSMA5(65,959円)を回復し、SMA25(65,633円)の上も維持——残るはSMA50(67,255円)です。レンジ内位置は67.4%(先週69.4%)、月間は+6.040%と大きなプラスです。
NYダウは53,560ドルで週間+0.531%(+283ドル)と3週ぶりに反発しました。週間始値53,262ドルがそのまま週間安値で、週間高値53,820ドルまで上げたあと高値圏で引けています。SMA5(53,518ドル)・SMA25(53,351ドル)・SMA50(52,797ドル)をすべて上回る位置を維持し、レンジ内位置は84.8%(先週84.2%)。月間では+3.810%です。100日間高値54,744ドルまでは2.2%。
米10年国債利回りは4.72%で週間-0.380%(-0.02ポイント)と、わずかに低下しました。ただし中身は往復です。週間安値4.62%まで低下する場面がありながら、金曜(8/28)のウォーシュ議長講演を受けて前日比+1.027%(+0.05ポイント)と急上昇し、週間高値4.73%に近い水準で引けました。レンジ内位置は94.8%(先週98.3%)で、100日間高値4.75%はまだ目の前です。SMA5(4.68%)・SMA25(4.67%)・SMA50(4.60%)をすべて上回り、月間では+2.120%。
VIX指数は14.43で週間-4.627%(-0.70ポイント)と再び低下しました。注目は週間安値14.13が、そのまま100日間安値になっている点です。つまり今週、直近100営業日で最も低い水準を更新しました。レンジ内位置は3.3%(先週6.9%)。SMA5(15.09)・SMA25(15.82)・SMA50(16.51)をすべて下回り、月間では-30.155%——12銘柄で最大の下落率です。100日間高値23.34とは1.6倍の開きがあります。
ビットコインは12,435,570円で週間+1.485%(+181,999円)でした(データ日:8/29)。先週の+22.33%からは大きく落ち着いています。ただし週の中身は激しく、週間高値12,940,111円がそのまま100日間高値——直近100営業日の最高値を更新しました。ドル建てでは8/25に約3か月ぶりの8万ドル台、8/26には一時8万1,000ドル台です。そこから週間安値12,021,725円まで押し戻され、終値は高値から約4%下の水準。SMA25(10,994,720円)・SMA50(10,697,951円)は大きく上回るものの、SMA5(12,576,358円)は下回りました。レンジ内位置は85.8%(先週81.6%)、月間は+19.940%です。
イーサリアムは390,724円で週間+1.389%(+5,353円)でした(データ日:8/29)。BTCと同じく、週間高値408,737円がそのまま100日間高値で、2週連続の100日間高値更新です。週間安値374,703円まで押す場面もあり、終値は高値から約4.4%下。SMA25(335,342円)・SMA50(319,258円)は大きく上回りますが、SMA5(394,746円)は下回りました。レンジ内位置は89.2%(先週88.5%)で12銘柄のなかで最も高く、月間は+27.214%——12銘柄で最大の月間上昇率です。
WTI原油は83.44ドルで週間-4.158%(-3.62ドル)と急反落し、12銘柄で最大の下落率(VIXを除く)となりました(データ日:8/28)。2週続いた上昇が止まった形です。週間始値86.50ドルから週間高値86.57ドルをつけたあと、週間安値79.62ドルまで7ドル近く急落——80ドルの大台を割り込む場面がありました。そこから83ドル台まで戻して引けています。SMA5(83.31ドル)・SMA25(82.41ドル)・SMA50(79.30ドル)はかろうじてすべて上回る位置。レンジ内位置は37.4%(先週39.6%)で、月間は-1.208%と再びマイナスへ。
金は4,504.1ドルで週間-2.595%(-120.0ドル)と、3週続伸のあと反落しました(データ日:8/28)。週間始値4,638.0ドルから週間高値4,688.0ドルまで上げて約3か月ぶりの高値をつけたあと、週間安値4,495.0ドルまで約190ドル下げ、安値圏で引けています。要因は急騰後の利益確定売りと、週末のドル高・金利上昇です。SMA25(4,342.18ドル)・SMA50(4,209.3ドル)を上回る位置は維持していますが、SMA5(4,598.18ドル)は割り込みました。レンジ内位置は先週の72.1%から59.0%へ低下。月間では+11.634%とプラスを保っています。
銀は67.09ドルで週間-3.420%(-2.38ドル)と、貴金属3品目で最大の下落率となりました(データ日:8/28)。先週「70ドルの大台が目前」と書いたその大台を、今週は週間高値72.05ドルでいったん超えています。ところがそこから週間安値66.83ドルまで5ドル以上の急落となり、安値圏で引けました。SMA25(63.80ドル)・SMA50(61.63ドル)は上回るものの、SMA5(68.34ドル)を割り込み。レンジ内位置は先週の42.7%から35.6%へ低下しました。月間では+15.946%で、これは貴金属3品目のなかで最大です。
白金は1,833.5ドルで週間-2.851%(-53.8ドル)と反落しました(データ日:8/28)。先週は+7.846%で貴金属3品目のなかで最大の上昇率でしたが、今週は週間高値1,910.7ドルまで上げたあと週間安値1,829.5ドルまで押し戻されています。SMA25(1,748.38ドル)・SMA50(1,682.92ドル)は上回るものの、SMA5(1,849.44ドル)を割り込み。レンジ内位置は先週の53.5%から45.4%へ低下し、100日間レンジの真ん中を再び下回りました。月間では+15.307%です。なおチャートを見ると、白金は6月以降データが飛び飛びになっている日が多く、日々の値動きの形は他銘柄ほど滑らかではない点にはご注意ください。
上海総合は今週、終値データが取得できませんでした。週間のレンジは始値3,902.70・高値3,958.03・安値3,850.86で、先週の終値3,905.20を挟んで上下に振れた形です。100日間高値4,258.86・安値3,741.11のレンジのなかでは、依然として下半分にとどまっています。インドSENSEX(76,934、データ日:8/27)は週間-0.779%(-604ポイント)と3週続落。SMA5(77,395)・SMA25(77,743)・SMA50(77,467)をすべて下回り、先週まで維持していたSMA5・SMA50も割り込みました。レンジ内位置は先週の76.7%から63.3%へ低下し、月間は+0.218%とかろうじてプラスです。
チャートをざっくり3グループに分けると——
🟢 上昇したもの:ビットコイン(+1.49%・週間高値12,940,111円が100日間高値を更新・一時8万1,000ドル台・レンジ内85.8%)、イーサリアム(+1.39%・100日間高値408,737円を更新・月間+27.21%は12銘柄で最大・レンジ内89.2%)、USD/CAD(+1.04%・15ペア最大の上昇・SMA200を回復)、USD/CHF(+1.01%・全SMA上へ復帰・上昇POは「混在」へ)、ドル円(+0.69%・160.074円・SMA25とSMA100を回復して160円台へ)、AUD/JPY(+0.57%・75日間高値114.959円を更新・SMA200乖離+3.86%は15ペア最大)、NYダウ(+0.53%・3週ぶり反発・レンジ内84.8%)、EUR/CHF(+0.25%・2週連続で15ペア唯一の真のPO)
🔴 下落したもの:VIX(-4.63%・14.43・週間安値14.13が100日間安値を更新・レンジ内3.3%・月間-30.16%)、WTI原油(-4.16%・83.44ドル・週間安値79.62ドルで80ドル割れ)、銀(-3.42%・67.09ドル・72.05ドルまで乗せて失速)、白金(-2.85%・1,833.5ドル・レンジ内45.4%)、金(-2.60%・4,504.1ドル・3週続伸のあと反落・レンジ内72.1%→59.0%)、NZD/USD(-1.09%・15ペア最大の下落)、EUR/USD(-0.81%・SMA200を1週で再び割り込む)、GBP/USD(-0.81%・4週ぶりの下落も全SMA上は維持)、インドSENSEX(-0.78%・3週続落で全SMA下へ)、EUR/AUD(-0.68%・75日間安値1.6158を更新・4週続落)、米10年利回り(-0.38%・4.72%・レンジ内94.8%・金曜は+1.03%と再上昇)、CHF/JPY(-0.35%)、CAD/JPY(-0.31%)、GBP/JPY(-0.14%)、日経平均(-0.13%・ただし8/20終値比。金曜8/28は66,405円で先週末比+0.59%)、EUR/JPY(-0.12%)、AUD/USD(-0.11%・それでも75日間高値0.7208を更新)
🟡 方向感を探っている:EUR/GBP(-0.001%・2週連続でぴったり0.8558。ただし下降パーフェクトオーダーは解消)、上海総合(今週は終値データが取得できず・週間レンジは3,850.86〜3,958.03)
ひと言でまとめると、「ウォーシュ議長の初講演でドルが復活──先週の全面高が1週間で巻き戻された週」でした。起点は金曜(8/28)のジャクソンホール会議です。ウォーシュFRB議長の議長就任後初の講演は、目先の金利の道筋ではなく物価安定の長期戦と構造改革を語る内容で、市場はこれをインフレ抑制優先と受け止めました。米10年債利回りは一時4.69%まで上昇し、ドルが全面高。ドル円は159.41円まで下げたあと160.20円まで上昇して引け、終値160.074円・週間+0.689%でSMA25とSMA100を回復しました。ドルが戻れば、先週ドル安で急騰した資産は逆回転します。銀-3.42%・白金-2.85%・金-2.60%と貴金属は3品目そろって反落し、上げた順に下げるという素直な形になりました。原油はさらに大きく-4.16%の83.44ドルで、週間安値79.62ドルと80ドル割れ。8/24に対イラン追加制裁(60超の個人・企業、二次制裁を含む5分野)が発表されたにもかかわらず下げたのは、米イラン交渉の進展観測とホルムズ海峡の通航正常化で供給過剰が意識されたためです。暗号資産は「高値だけ取って終値が伸びない」週でした。BTCは8/25に約3か月ぶりの8万ドル台、8/26に一時8万1,000ドル台まで上げ、週間高値12,940,111円が100日間高値を更新(ETHも408,737円で更新)。ところが8/28の約64億ドル規模のオプション満期を前に失速し、終値の週間騰落は+1.49%/+1.39%にとどまりました。株式は落ち着いており、NYダウは3週ぶりの+0.53%。日経平均は8/26のエヌビディア決算が売上962億ドル・前年同期比+106%と好内容だったにもかかわらず、8/27にメモリー価格への警戒から67,000円を前に失速して-130円。それでも金曜8/28は66,405円・先週末比+0.59%で引け、先週の-3.93%からは小さく戻しています。為替の位置関係では15ペア中9ペアが4本すべての移動平均線の上——数は先週と同じですが、EUR/USDが抜けてUSD/CHFが入るという入れ替わりが起きました。そのなかで別格だったのが豪ドルで、AUD/JPYとAUD/USDがそろって75日間高値を更新し、EUR/AUDは75日間安値——3方向すべてで最も強い形です。そして週末のVIXは14.43、週間安値14.13で100日間安値を更新、レンジ内位置3.3%。ジャクソンホールという最大級のイベントを通過して恐怖指数が100日間で最も低いという状態は、無難な消化の証でもあり、悪材料への耐性が薄いことの裏返しでもあります。来週は9/4(金)の米8月雇用統計が最大の焦点です。7月は-2.3万人・失業率4.1%・5-6月合計10.3万人の下方修正という弱い内容でした。「弱い労働市場」と「下がりきらない物価」のどちらが勝つか——2週続けて巻き戻しが起きている相場だけに、来週も同じ振れ方をする可能性は意識しておきたいところです。
今週の相場をひとつの材料で説明するなら、これです。金曜(8/28)、ウォーシュFRB議長が議長として初めてジャクソンホール会議で講演しました。テーマは「金融革新:決済と政策への含意」。もともとウォーシュ議長は先行きの金融政策を示唆するフォワードガイダンスに否定的で、今回も目先の利上げ・利下げの道筋を語るのではなく、技術革新や人口動態といった構造的な問いに軸足を置く内容でした。講演では5つの改革タスクフォース——コミュニケーション手法の見直し、バランスシート適正化の検証、インフレ測定指標の拡充、デジタル決済への対応、準備預金規模の最適化——が進行中であることも示されています。市場はこれを「短期の金利のヒントを求める市場に、物価安定の長期戦を突きつけた」と受け止め、米10年債利回りは一時4.69%まで上昇、終値は4.72%(前日比+1.027%)。為替はドル円が159.41円まで弱含んだあと160.20円まで上昇して引け、ユーロドルは1.1658ドルから1.1578ドル、ポンドドルは1.3599ドルから1.3527ドルへ下落しました。
水曜(8/26)、米商務省経済分析局が7月の個人消費支出(PCE)価格指数を発表しました。FRBがインフレ判断で最も重視する指標です。結果は総合が前年同月比+3.7%で市場予想の+3.6%を小幅に上回り、コアPCEは+3.3%と市場予想どおり・前月から横ばいでした。同じ日に4-6月期の実質GDP改定値と企業利益速報も同時公表されています。指標発表直後は総合の上振れを受けてドル買いで反応しました。ただし個人消費そのものは実質ベースで停滞しており、「物価は下がりきらないが景気の勢いも鈍い」という、判断の難しい組み合わせです。
水曜(8/26)の米国市場の引け後、エヌビディアの5〜7月期決算が公表されました。売上高962億ドルは前年同期の467億ドルから+106%、純利益は597億ドル、調整後EPSも市場予想の2.09ドルを上回る好内容です。次の四半期の売上見通しも1,080億ドルと強気でした。ところが翌8/27の東京市場は素直に伸びません。寄り付きは513円高、直後には上げ幅を600円超へ広げたものの、66,900円台で67,000円の節目を前に買いが続かず失速し、前日比-130円18銭の66,131円98銭で3日ぶりの反落となりました。理由は決算の中身そのものより、経営陣が触れたメモリー価格の高騰です。AI関連の設備投資が同じ勢いを保てるのか、という疑いが残りました。
月曜(8/24)、トランプ政権がイランへの新たな経済制裁を発表しました。核開発などに関与したとして60を超える個人・企業に制裁を科すほか、イランとデジタル資産などの取引をした国にも制裁を発動する内容で、重点は航空・海運/デジタル資産/金/通貨リアル/兵器関連技術の5分野です。ベッセント財務長官は「イランの金融ネットワークに対し経済的な猛攻撃を開始する」と表明しました。普通なら原油高につながる材料です。ところが実際は逆でした。翌火曜(8/25)のNYMEXでは米国とイランの戦闘終結に向けた交渉が進むとの観測から売りが優勢となり、ホルムズ海峡の通航回復でペルシャ湾岸からの輸出が急回復し、市場が供給過剰に転じるとの見方が広がっています。WTI原油は週間-4.158%(-3.62ドル)の83.44ドル、週間安値は79.62ドルと80ドルを割り込む場面もありました。
木曜(8/27)、氷見野日銀副総裁が埼玉県での金融経済懇談会で講演しました。市場は9月利上げを約8割織り込んでおり、この講演が「地ならし」になるかが注目点でした。結果は利上げに前向きな姿勢はにじませたものの、9月会合に向けた明確なシグナルは出ず。そのため円が再び売られる展開になり、ドル円は159.52円前後まで上値を伸ばしてこの日を終えています。金曜(8/28)に総務省が発表した8月の東京都区部CPIは、生鮮食品を除く総合が前年比+1.8%。政府の電気・ガス代補助とコメ価格の下落により、7か月連続で2%を下回りました(総合+1.9%、生鮮・エネルギーを除く総合+2.0%)。
先週の急騰の勢いは、週の前半まで続きました。ビットコインは8/25に8万ドルを突破——この水準は5月15日以来、約3か月ぶりです。翌8/26には一時8万1,000ドル台まで上げましたが、そこから失速して8万ドルを割り込みました。上値が重かった理由はオプション市場にあります。8/28の月末満期に向けた建玉は8万1,307BTC、想定元本で約63.9億ドルに達しており、現在値より上で最も積み上がっている権利行使価格がちょうど8万ドルでした。円建てでは週間高値12,940,111円が、そのまま100日間高値となっています(イーサリアムも週間高値408,737円で100日間高値を更新)。
・9/1(火)米7月JOLTS求人件数・8月ISM製造業景況指数──週前半の方向づけ
・9/2(水)8月ADP雇用統計──金曜の雇用統計の前哨戦
・9/4(金)米8月雇用統計──来週最大のイベント。7月は非農業部門雇用者数が前月比-2.3万人、失業率4.1%で、しかも5月・6月が合計10.3万人の下方修正という弱い内容でした
・そのほか、日銀9月会合(9/17-18)に向けた要人発言にも注意
ポイントは「弱い労働市場」と「下がりきらない物価」のどちらが勝つかです。市場が織り込む9月の利上げ確率は4割弱、12月までの追加利上げ確率は7割程度。労働市場の底堅さが示されれば早期利上げ観測が再燃してドル高・金利上昇が進みやすく、逆に弱ければ今週のドル高がそのまま巻き戻されます。2週続けて「巻き戻し」が起きている相場だという点は、頭に置いておきたいところです。