今週の順位表は、「利上げしたかどうか」では説明できません。9月2日(水)、日銀の高田創審議委員が札幌市での講演で「半年に1回0.25%という想定から脱し、機動的に行う新たな局面に入った」と述べ、9月18日会合での利上げと、その先の連続利上げの観測が一気に強まりました。円は7ペア全勝の完璧な全方位型JPY高で+2.3418──当サイト記録上2番目に大きい強弱指数です。ところがまったく同じ9月2日、RBNZは政策金利を2.50%から2.75%へ実際に引き上げています。それでもNZドルは0勝7敗の完璧な全方位型NZD安で最弱。示された利上げ経路が市場の想定ほどタカ派でなく、10月の追加利上げ観測が後退したためです。まだ1円も上げていない通貨が首位、実際に25ベーシスポイント上げた通貨が最弱──動かしたのは金利の方向でも水準でもなく、「これから先のペースの予想が動いたかどうか」でした。前週7ペア全勝で首位だった米ドルは5位へ-4ランク転落し、前号で予告した検証は8例中8例で決着しています。
| 順位 | 通貨 | 強弱指数 | 前週 | 可視化 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 🇯🇵 JPY | +2.3418 | 3位 ⬆ | |
| 2 | 🇦🇺 AUD | +0.2286 | 2位 → | |
| 3 | 🇨🇦 CAD | +0.1143 | 6位 ⬆ | |
| 4 | 🇪🇺 EUR | -0.1191 | 4位 → | |
| 5 | 🇺🇸 USD | -0.4391 | 1位 ⬇ | |
| 6 | 🇨🇭 CHF | -0.4938 | 7位 → | |
| 7 | 🇬🇧 GBP | -0.5637 | 5位 ⬇ | |
| 8 | 🇳🇿 NZD | -1.0689 | 8位 → |
| 順位 | ペア | 変化率 | 方向 |
|---|---|---|---|
| 1 | JPY/NZD | +3.021% | JPY首位 / NZD最弱 |
| 2 | JPY/CHF | +2.532% | JPY首位 / CHF6位 |
| 3 | JPY/CAD | +1.982% | JPY首位 / CAD3位 |
| 4 | JPY/AUD | +1.882% | JPY首位 / AUD2位 |
| 5 | AUD/NZD | +1.127% | AUD2位 / NZD最弱 |
| 順位 | ペア | 変化率 | 方向 |
|---|---|---|---|
| 最下位 | GBP/JPY | -2.482% | GBP7位 / JPY首位 |
| -2 | USD/JPY | -2.385% | USD5位 / JPY首位 |
| -3 | EUR/JPY | -2.109% | EUR4位 / JPY首位 |
今週の為替をひとつの材料で説明するなら、これです。9月2日(水)、日銀の高田創審議委員が札幌市での講演で「利上げについて、私は2026年を従来の半年に1回、0.25%という想定から脱し、機動的に行う新たな局面に入ったと考えている」と述べました。さらに「連続利上げは一般論としてあり得る」「利上げ幅も0.25%にこだわらず機動的に対応することが必要」との認識も示しています。
市場がこれまで前提にしていたのは「半年に1回・0.25%ずつ」というゆっくりしたペースでした。その前提そのものが崩れ、9月17〜18日の会合で0.25%の利上げに踏み切り、10月以降も追加利上げを排除しないとの観測が広がります。日米金利差の縮小を織り込む形で円買いが加速し、ドル円は160円台前半から158.20円前後まで約2円の急落となりました。
今週いちばん重要な対比がこれです。まったく同じ9月2日(水)、RBNZは政策金利(OCR)を2.50%から2.75%へ25ベーシスポイント引き上げました。実際に金利を上げたのです。ところがNZドルは0勝7敗の完璧な全方位型NZD安で最弱、指数は-1.0689まで沈みました。
理由は声明と見通しにあります。RBNZは「将来のOCR経路はあらかじめ決まっておらず、タイミングは引き続き極めて不確実」と強調し、示された政策金利の経路は市場の想定ほどタカ派ではありませんでした。10月の追加利上げの可能性が低下したと受け止められ、NZの卸売金利とNZドルがそろって下落。NZD/USDはこの日だけで1.45%下げ、0.5810前後をつけています。
先週このレポートは、7ペア全勝で首位に立った米ドルについて「次号ではまず『ドルが崩れたか』を検証することになります」と書きました。結果は首位から5位へ-4ランク、指数は+0.8122から-0.4391へ1.25ポイントの悪化、勝敗は2勝5敗です。勝てたのはUSD/NZD(+0.550%)とUSD/GBP(+0.127%)の2ペアだけでした。
「完璧な全方位型で勝った通貨は翌週に崩れやすい」という経験則は、これで8例目(fx-28 NZD/fx-30 USD・AUD/fx-31 JPY/fx-32 AUD/fx-33 CAD/fx-34 CHF/今週 USD)。7ペア全勝の翌週に順位を維持できた通貨は、8例中ゼロのままです。今週その7勝0敗を記録したのは日本円ですから、次号ではまず「円が崩れたか」を見ることになります。
週の前半、米国の指標はそろって弱い結果でした。9月1日(火)の8月ISM製造業景況指数は54.6(7月の55.6から低下、雇用は51.2へ悪化)、同日の7月JOLTS求人件数は727.1万件と予想を下回り、9月2日(水)の8月ADP雇用統計は+3.8万人で2026年1月以来の低水準(予想+4.7万〜4.8万人程度)。9月3日(木)にはウォラーFRB理事が「ディスインフレ傾向が継続すれば、政策金利の据え置きを支持する」と発言し、早期利上げ警戒が急速に後退しました。
ところが9月4日(金)の8月米雇用統計は非農業部門雇用者数+16.2万人(予想+5.5万人)と大幅な上振れで、過去5か月で最大の伸びです(民間+12.7万人・政府+3.5万人、失業率4.1%、平均時給前月比+0.3%)。これを受けて米10年国債利回りは週間高値4.81%で100日間高値を更新しました。それでもドル円は156.75円までしか戻せず、そこから155.34円まで押し戻されて156.221円で引けています(週間-2.385%)。
先週このレポートは「米イラン交渉の進展観測で原油-4.16%」と書きましたが、今週は完全に逆でした。8月31日(月)、ホルムズ海峡でサウジアラビア産原油を積んだ大型タンカー2隻が正体不明の飛翔体による攻撃を受けます。翌9月1日(火)にはイラン革命防衛隊が「ホルムズ海峡などで米英の石油タンカー3隻をミサイル攻撃した」と表明。その後もイランがヨルダンやバーレーンの米軍関連施設を攻撃したと報じられ、WTI原油は週間+9.376%の91.22ドル、週間高値93.14ドルは約6週間ぶりの高値となりました。
カナダドルはこれを受けて6位から3位へ+3ランク(-0.3529→+0.1143)、5勝2敗です。先週このレポートは「原油はCADの短期的な値幅を説明できても、8通貨のなかでの相対的な位置はここ数週間ほとんど動いていない」と書きましたが、3週続いた6位固定は今週で終わりました。原油が±4〜5%程度では順位が動かず、+9.4%という水準まで来て初めて順位に反映された、と読むのが正確なところです。
今週の変化は順位表だけではありません。4本すべての移動平均線の上にある通貨ペアは、先週の9ペアから3ペアへ激減(AUD/USD・USD/CHF・EUR/CHF)。逆に4本すべての下にあるペアは1ペアから7ペアへ急増しました(USD/JPY・EUR/JPY・GBP/JPY・CHF/JPY・CAD/JPY・USD/CAD・EUR/AUD)。
下に落ちた7ペアのうち5ペアが円ペアで、今週の変化がほぼ円だけで説明できることが分かります。ドル円は週間安値155.288円まで下げ、75日間安値155.211円(7月31日の日米協調介入時の安値)まで、わずか0.077円のところまで迫りました。CHF/JPYは週間安値191.473円がそのまま75日間安値の更新です。
JPY/NZD(+3.021%、今週最大の上昇率)、JPY/CHF(+2.532%)、JPY/GBP(+2.482%)、JPY/USD(+2.385%)、JPY/EUR(+2.109%)、JPY/CAD(+1.982%)、JPY/AUD(+1.882%)と7ペアすべてで勝利する完璧な全方位型JPY高。しかも7ペア中6ペアで2%以上の勝ち幅という、勝ち数だけでなく勝ち幅もそろった内容です。
起点は9月2日(水)の高田審議委員の講演で、そこに9月2日のADP雇用統計+3.8万人と9月3日のウォラーFRB理事のハト派発言が重なりました。「日銀のタカ派」と「FRBのハト派」が同じ方向に効いたため、2日間でドル円は5円前後の下落となっています。ドル円は週間始値160.141円から週間安値155.288円まで5.1円の下落、終値156.221円で4本すべての移動平均線を下抜けしました。
6勝1敗で2位を維持。唯一の黒星はAUD/JPY(-1.882%)で、円以外の6通貨すべてに勝ちました。先週は「ドル以外の6通貨すべてに勝って2位」でしたから、2週続けて「首位の1通貨にだけ負ける2位」という同じ形です。
支えたのは9月2日(水)の豪4-6月期GDPで、前期比+0.4%(予想+0.3%、1-3月期は+0.3%)、前年比+2.1%(予想+1.8%)といずれも上振れしました。RBAの「高金利長期化」観測が強まり、先週の7月CPI上振れに続く追い風です。AUD/USDは週間+0.575%で15通貨ペア最大の上昇率、週間高値0.7214がそのまま75日間高値で2週連続の更新。SMA200乖離率+3.150%は15ペアで最大のプラスです。
5勝2敗で3位。負けたのはCAD/JPY(-1.905%)とCAD/AUD(-0.113%)だけで、3週続いた6位固定からようやく抜け出しました。CAD/NZD(+1.054%)、CAD/GBP(+0.617%)、CAD/CHF(+0.514%)、CAD/USD(+0.482%)、CAD/EUR(+0.227%)と勝ち方も一貫しています。
材料はWTI原油の週間+9.376%(91.22ドル、週間高値93.14ドルは約6週間ぶり高値)。8月31日のホルムズ海峡タンカー攻撃と9月1日のイラン革命防衛隊による攻撃表明が直接の引き金です。先週は原油-4.16%でCADが6位、今週は原油+9.4%でCADが3位と、久しぶりに教科書どおりの連動になりました。
4勝3敗で4週連続の4位。8通貨のなかで最も順位が動かない通貨という位置づけが、さらに固まりました。勝ったのはEUR/NZD(+0.809%)、EUR/GBP(+0.393%)、EUR/CHF(+0.331%)、EUR/USD(+0.266%)で、負けたのはEUR/JPY(-2.109%)、EUR/AUD(-0.297%)、EUR/CAD(-0.227%)です。
ユーロドルは1.1613で週間+0.269%と小幅反発しましたが、週間高値1.1641・週間安値1.1566と値幅は0.0075ドルしかなく、15ペアでも動きの小さい部類でした。位置関係は先週と変わらずSMA25(1.1592)・SMA50(1.1507)・SMA100(1.1563)の上、SMA200(1.1632)の下で、乖離率-0.162%と2週続けて200日線のすぐ下で止まっています。
首位から5位へ-4ランク、2勝5敗。勝てたのはUSD/NZD(+0.550%)とUSD/GBP(+0.127%)の2ペアだけで、いずれも下位2通貨が相手です。負けたのはUSD/JPY(-2.385%)、USD/AUD(-0.580%)、USD/CAD(-0.482%)、USD/EUR(-0.266%)、USD/CHF(-0.037%)。
週の前半はISM製造業・JOLTS・ADPがそろって下振れし、9月3日のウォラーFRB理事のハト派発言で早期利上げ観測が後退。この日のドル円は終値ベースで約1.8%の大幅安となりました。金曜の雇用統計+16.2万人(予想+5.5万人)で流れは反転しましたが、米10年利回りが100日間高値4.81%を更新してもドル円は156.75円までしか戻せず、そこからさらに押し戻されています。
3勝4敗で6位。順位こそ1つ上げましたが、勝てたのはCHF/NZD(+0.479%)、CHF/USD(+0.037%)、CHF/GBP(+0.027%)と、いずれも0.5%未満の小さな勝ちです。対してCHF/JPYは-2.532%と大きく負けました。
フランは「利上げから最も遠い通貨」という位置づけが、そのまま弱さになっています。日銀が連続利上げに動くという観測のなかで、SNBは0%据え置きの見通しが続いており、CHF/JPYは週間安値191.473円で75日間安値を更新しました。EUR/CHFは3週連続で15ペア唯一の真のパーフェクトオーダー、週間高値0.9435は75日間高値で、USD/CHFも4本すべてのSMAの上を維持──どちらもフラン安という一点で共通しています。
1勝6敗で7位。勝てたのは最弱NZD相手のGBP/NZD(+0.442%)だけです。負け方も一貫しており、GBP/JPY(-2.482%)、GBP/AUD(-0.742%)、GBP/CAD(-0.617%)、GBP/EUR(-0.393%)、GBP/USD(-0.127%)、GBP/CHF(-0.027%)。
ここで注目したいのは、GBP/USDが週間-0.122%で15通貨ペア中もっとも変動の小さい1週間だったことです。対ドルではほぼ動かなかったのに、対円では15ペア最大の下落(-2.492%)──この2つを並べると、「ポンドが売られた」のではなく「円が買われた」ことがはっきり見えます。英国発の大きな材料はなく、ポンドの7位は円高の受け身で決まりました。
2週連続で0勝7敗の完璧な全方位型NZD安。指数は-0.4431から-1.0689へさらに0.63ポイント悪化し、-1を超える水準まで沈みました。NZD/JPY(-3.021%)、NZD/AUD(-1.127%)、NZD/CAD(-1.054%)、NZD/EUR(-0.809%)、NZD/USD(-0.550%)、NZD/CHF(-0.479%)、NZD/GBP(-0.442%)と、7通貨すべてに負けています。
先週このレポートは「今週0勝7敗を記録した以上、当サイトの経験則からは反動での上昇も想定内」と書きましたが、反動は来ませんでした。むしろ悪化しています。理由は9月2日(水)のRBNZで、政策金利は2.50%→2.75%へ引き上げられたものの、示された利上げ経路が想定ほどタカ派でなく、10月の追加利上げ観測が後退。NZの卸売金利とNZドルがそろって下落しました。NZD/USDは週間-0.547%で2週続落、SMA25(0.5905)を割り込み、週間安値0.5805まで下げています。
順位表を上から見ると、1位JPY(+2.3418)と2位AUD(+0.2286)のあいだに2.1132ポイントという巨大な断層があります。一方で2位から8位までの7通貨は+0.2286〜-1.0689の1.2975ポイント内に収まっており、断層はこの一箇所だけです。
JPY(1位+2.3418)とCHF(6位-0.4938)で指数差2.8356ポイント。fx-34で1位と7位、fx-35で3位と7位、今週は1位と6位と、3週連続で順位表の両端近くに分かれています。
AUD(2位+0.2286)とNZD(8位-1.0689)で指数差1.2975ポイント。先週の1.0895ポイントからさらに広がり、2週連続の完全分裂です。AUD/NZDは+1.127%で28ペア中5番目の上昇率でした。
EUR(4位-0.1191)・GBP(7位-0.5637)・CHF(6位-0.4938)で、グループ平均-0.39は3グループ中で最下位です。3通貨すべてがマイナス圏という「全滅」は、fx-30(7月24日週)以来になります。