2026年8月28日〜9月4日(週次レポート)

通貨強弱ファンダメンタルズ分析
──日銀の一言で円が+2.3418、利上げしたNZドルが最弱

今週の順位表は、「利上げしたかどうか」では説明できません。9月2日(水)、日銀の高田創審議委員が札幌市での講演で「半年に1回0.25%という想定から脱し、機動的に行う新たな局面に入った」と述べ、9月18日会合での利上げと、その先の連続利上げの観測が一気に強まりました。円は7ペア全勝の完璧な全方位型JPY高で+2.3418──当サイト記録上2番目に大きい強弱指数です。ところがまったく同じ9月2日、RBNZは政策金利を2.50%から2.75%へ実際に引き上げています。それでもNZドルは0勝7敗の完璧な全方位型NZD安で最弱。示された利上げ経路が市場の想定ほどタカ派でなく、10月の追加利上げ観測が後退したためです。まだ1円も上げていない通貨が首位、実際に25ベーシスポイント上げた通貨が最弱──動かしたのは金利の方向でも水準でもなく、「これから先のペースの予想が動いたかどうか」でした。前週7ペア全勝で首位だった米ドルは5位へ-4ランク転落し、前号で予告した検証は8例中8例で決着しています。

順位 通貨 強弱指数 前週 可視化
1 🇯🇵 JPY +2.3418 3位 ⬆
2 🇦🇺 AUD +0.2286 2位 →
3 🇨🇦 CAD +0.1143 6位 ⬆
4 🇪🇺 EUR -0.1191 4位 →
5 🇺🇸 USD -0.4391 1位 ⬇
6 🇨🇭 CHF -0.4938 7位 →
7 🇬🇧 GBP -0.5637 5位 ⬇
8 🇳🇿 NZD -1.0689 8位 →
順位ペア変化率方向
1JPY/NZD+3.021%JPY首位 / NZD最弱
2JPY/CHF+2.532%JPY首位 / CHF6位
3JPY/CAD+1.982%JPY首位 / CAD3位
4JPY/AUD+1.882%JPY首位 / AUD2位
5AUD/NZD+1.127%AUD2位 / NZD最弱
順位ペア変化率方向
最下位GBP/JPY-2.482%GBP7位 / JPY首位
-2USD/JPY-2.385%USD5位 / JPY首位
-3EUR/JPY-2.109%EUR4位 / JPY首位
8枠中7枠を円絡みが独占──7月31日週とまったく同じ構図:TOP5の上位4ペアがすべて「JPY/○○」、BOTTOM3の3ペアすべてが「○○/JPY」で、合計8枠のうち7枠が円絡みです。残る1枠のAUD/NZD(+1.127%)も、最弱NZDが分母に来た結果にすぎません。これはfx-strength-31(7月31日週、JPY +2.9756)で記録したのとまったく同じ構図で、当サイトで2度目になります。変化率の水準も突出しており、JPY/NZDの+3.021%は28ペア中で唯一の3%超。上から4番目のJPY/AUD(+1.882%)まで円絡みが続いたあと、5番目のAUD/NZDで一気に+1.127%へ落ちます。「円 vs その他全部」という言葉がそのまま当てはまる週でした。
「番狂わせゼロの完全序列」は1週で途切れた──原因はUSD/CHFの1ペアだけ:対7通貨の勝敗はJPY 7勝0敗/AUD 6勝1敗/CAD 5勝2敗/EUR 4勝3敗/USD 2勝5敗/CHF 3勝4敗/GBP 1勝6敗/NZD 0勝7敗。5位USDと6位CHFのところだけ勝ち数が逆転しており、前号で3週ぶりに復活した完全序列は1週で終わりました。ただし逆転を生んだのはUSD/CHF(-0.037%)というただ1ペアで、これは28ペアのなかで2番目に動かなかったペアです(最小はGBP/CHFの-0.027%)。fx-strength-34のGBP/CAD(-0.007%)とまったく同じ構造で、番狂わせが出るときは決まって「ほとんど動かなかったペア」が原因という傾向が、これで2度目の確認になりました。実質的には引き分けです。
指数レンジは3.4107ポイントへ急拡大:最強JPY(+2.3418)と最弱NZD(-1.0689)の差は3.4107ポイントで、先週の1.2553ポイントから2.7倍に開きました。しかも2位AUD(+0.2286)から8位NZD(-1.0689)までの7通貨は1.2975ポイント内に収まっており、断層は1位と2位のあいだの2.1132ポイントただ一箇所です。先週は「USD・AUDの2強」でしたが、今週は文字どおり「円1強」。1通貨だけが抜け出す形は、fx-31以来5週ぶりになります。

① 9月2日、日銀・高田審議委員の「機動的に行う新たな局面」

今週の為替をひとつの材料で説明するなら、これです。9月2日(水)、日銀の高田創審議委員が札幌市での講演で「利上げについて、私は2026年を従来の半年に1回、0.25%という想定から脱し、機動的に行う新たな局面に入ったと考えている」と述べました。さらに「連続利上げは一般論としてあり得る」「利上げ幅も0.25%にこだわらず機動的に対応することが必要」との認識も示しています。

市場がこれまで前提にしていたのは「半年に1回・0.25%ずつ」というゆっくりしたペースでした。その前提そのものが崩れ、9月17〜18日の会合で0.25%の利上げに踏み切り、10月以降も追加利上げを排除しないとの観測が広がります。日米金利差の縮小を織り込む形で円買いが加速し、ドル円は160円台前半から158.20円前後まで約2円の急落となりました。

ここは前号までの見立てを更新する必要があります。当サイトはここ数週間、「9月利上げはすでに織り込み済みだから、新しい円買い材料にならない」と書いてきました。今週それが変わったのは、論点が「9月に上げるか」から「そのあと、どのペースで上げ続けるか」へ移ったためです。1回の利上げは織り込めても、「連続利上げ」と「0.25%にこだわらない」という2つの言葉は、まだ価格に入っていませんでした。fx-strength-33以来くり返してきた「利上げしても実質金利はマイナス圏を脱しない」という枠組みが、ここで初めて揺らいだことになります。

② 同じ9月2日、RBNZは実際に利上げした──それでもNZドルが最弱

今週いちばん重要な対比がこれです。まったく同じ9月2日(水)、RBNZは政策金利(OCR)を2.50%から2.75%へ25ベーシスポイント引き上げました。実際に金利を上げたのです。ところがNZドルは0勝7敗の完璧な全方位型NZD安で最弱、指数は-1.0689まで沈みました。

理由は声明と見通しにあります。RBNZは「将来のOCR経路はあらかじめ決まっておらず、タイミングは引き続き極めて不確実」と強調し、示された政策金利の経路は市場の想定ほどタカ派ではありませんでした。10月の追加利上げの可能性が低下したと受け止められ、NZの卸売金利とNZドルがそろって下落。NZD/USDはこの日だけで1.45%下げ、0.5810前後をつけています。

日本とNZを並べると、今週の軸がはっきりします。日本はまだ1円も上げていないのに首位、NZは実際に25ベーシスポイント上げたのに最弱。動かしたのは金利の方向でも、金利の水準でもなく、「これから先のペースについての予想が、どちらへ動いたか」でした。fx-33で「金利の方向ではなく水準(実質金利)を見る」、fx-34で「金利がなぜ動いたかまで見る」と積み上げてきた読み方に、今週「市場が織り込んでいたペースと比べてどうだったか」という一段が加わります。決定そのものではなく、決定と織り込みの差が価格を動かすという、ごく基本的な話でもあります。

③ 前週7勝0敗の米ドルが5位へ──経験則は8例中8例に

先週このレポートは、7ペア全勝で首位に立った米ドルについて「次号ではまず『ドルが崩れたか』を検証することになります」と書きました。結果は首位から5位へ-4ランク、指数は+0.8122から-0.4391へ1.25ポイントの悪化、勝敗は2勝5敗です。勝てたのはUSD/NZD(+0.550%)とUSD/GBP(+0.127%)の2ペアだけでした。

「完璧な全方位型で勝った通貨は翌週に崩れやすい」という経験則は、これで8例目(fx-28 NZD/fx-30 USD・AUD/fx-31 JPY/fx-32 AUD/fx-33 CAD/fx-34 CHF/今週 USD)。7ペア全勝の翌週に順位を維持できた通貨は、8例中ゼロのままです。今週その7勝0敗を記録したのは日本円ですから、次号ではまず「円が崩れたか」を見ることになります。

もうひとつ、先週書いた見立ても検証できました。「ドルはトレンドが始まったというより、週ごとに材料の出どころが変わるたびに全面高と全面安を往復している」という読みです。ドルの過去7週推移は「1→8→6→5→8→1→5」となり、2週続けて同じ位置にとどまった週は依然としてゼロ。8月19日は財務省、8月28日はFRB、そして今週は日銀とFRB理事──ドルを動かす材料の出どころは3週続けて入れ替わりました。

④ 米金利は100日間高値を更新──それでもドル円は-2.385%

週の前半、米国の指標はそろって弱い結果でした。9月1日(火)の8月ISM製造業景況指数は54.6(7月の55.6から低下、雇用は51.2へ悪化)、同日の7月JOLTS求人件数は727.1万件と予想を下回り、9月2日(水)の8月ADP雇用統計は+3.8万人で2026年1月以来の低水準(予想+4.7万〜4.8万人程度)。9月3日(木)にはウォラーFRB理事が「ディスインフレ傾向が継続すれば、政策金利の据え置きを支持する」と発言し、早期利上げ警戒が急速に後退しました。

ところが9月4日(金)の8月米雇用統計は非農業部門雇用者数+16.2万人(予想+5.5万人)と大幅な上振れで、過去5か月で最大の伸びです(民間+12.7万人・政府+3.5万人、失業率4.1%、平均時給前月比+0.3%)。これを受けて米10年国債利回りは週間高値4.81%で100日間高値を更新しました。それでもドル円は156.75円までしか戻せず、そこから155.34円まで押し戻されて156.221円で引けています(週間-2.385%)。

ここが今週いちばんの発見です。米金利が100日間で最も高い水準を更新した週に、ドル円は-2.385%の急落──金利差の理屈だけならあり得ない組み合わせに見えます。ただしfx-31の「金利差で説明できない円高」とは中身が違います。あのときは説明できる材料がなくポジションの巻き戻しと整理しましたが、今回は動いたのが「米国の金利」ではなく「日本の金利観」だからで、きちんと説明がつきます。金利差は分子(米国)だけでなく分母(日本)でも決まる──当たり前のことですが、米国側だけを見ていると読み違える週でした。

⑤ ホルムズ海峡でタンカー攻撃──原油+9.4%でカナダドルが3週ぶりに浮上

先週このレポートは「米イラン交渉の進展観測で原油-4.16%」と書きましたが、今週は完全に逆でした。8月31日(月)、ホルムズ海峡でサウジアラビア産原油を積んだ大型タンカー2隻が正体不明の飛翔体による攻撃を受けます。翌9月1日(火)にはイラン革命防衛隊が「ホルムズ海峡などで米英の石油タンカー3隻をミサイル攻撃した」と表明。その後もイランがヨルダンやバーレーンの米軍関連施設を攻撃したと報じられ、WTI原油は週間+9.376%の91.22ドル、週間高値93.14ドルは約6週間ぶりの高値となりました。

カナダドルはこれを受けて6位から3位へ+3ランク(-0.3529→+0.1143)、5勝2敗です。先週このレポートは「原油はCADの短期的な値幅を説明できても、8通貨のなかでの相対的な位置はここ数週間ほとんど動いていない」と書きましたが、3週続いた6位固定は今週で終わりました。原油が±4〜5%程度では順位が動かず、+9.4%という水準まで来て初めて順位に反映された、と読むのが正確なところです。

ただしカナダドルも円には勝てていません。CAD/JPYは-1.905%で、先週まで維持していた4本すべての移動平均線をまとめて割り込みました。原油+9.4%というカナダドル側の強い追い風があってなお、円高がそれを上回った形です。USD/CADは-0.482%で200日線(1.3838)を再び割り込み、4本すべてのSMAの下へ逆戻り──ただし乖離率は-0.023%と、200日線にほぼ貼り付いた状態です。原油高(カナダドル買い)と米雇用統計後のドル高(ドル買い)が相殺した結果でした。

⑥ 移動平均線との位置関係が1週間でひっくり返った

今週の変化は順位表だけではありません。4本すべての移動平均線の上にある通貨ペアは、先週の9ペアから3ペアへ激減(AUD/USD・USD/CHF・EUR/CHF)。逆に4本すべての下にあるペアは1ペアから7ペアへ急増しました(USD/JPY・EUR/JPY・GBP/JPY・CHF/JPY・CAD/JPY・USD/CAD・EUR/AUD)。

下に落ちた7ペアのうち5ペアが円ペアで、今週の変化がほぼ円だけで説明できることが分かります。ドル円は週間安値155.288円まで下げ、75日間安値155.211円(7月31日の日米協調介入時の安値)まで、わずか0.077円のところまで迫りました。CHF/JPYは週間安値191.473円がそのまま75日間安値の更新です。

155.211円という水準は、7月31日に日米が協調介入して当局が「守った」あとの安値です。介入で作った安値を市場が自力で更新できるかどうかは、単なる節目以上の意味を持ちます。なおVIXは中東情勢を受けて週間高値16.82まで跳ねる場面(週間安値13.80から率にして22%)がありましたが、終値は14.53でレンジ内位置7.7%。先週このレポートが「警戒が薄いと悪材料が出たときの跳ね方が大きくなる」と書いた通りの動きが出た一方、跳ねてもすぐ戻ったという点では、市場はまだ中東を局地的なリスクとして扱っています。

🇯🇵 JPY(日本円)── 1位 / +2.3418

前週3位 → 今週1位(+2)

JPY/NZD(+3.021%、今週最大の上昇率)、JPY/CHF(+2.532%)、JPY/GBP(+2.482%)、JPY/USD(+2.385%)、JPY/EUR(+2.109%)、JPY/CAD(+1.982%)、JPY/AUD(+1.882%)と7ペアすべてで勝利する完璧な全方位型JPY高。しかも7ペア中6ペアで2%以上の勝ち幅という、勝ち数だけでなく勝ち幅もそろった内容です。

起点は9月2日(水)の高田審議委員の講演で、そこに9月2日のADP雇用統計+3.8万人と9月3日のウォラーFRB理事のハト派発言が重なりました。「日銀のタカ派」と「FRBのハト派」が同じ方向に効いたため、2日間でドル円は5円前後の下落となっています。ドル円は週間始値160.141円から週間安値155.288円まで5.1円の下落、終値156.221円で4本すべての移動平均線を下抜けしました。

強弱指数+2.3418は、当サイト記録上2番目に大きい値です(1位は+2.9756=JPY・7月31日、旧2位は+2.0274=NZD・5月29日)。正の記録の1位と2位を、いずれも円が占めたことになります。ただしここは強く警戒したいところで、その1位を記録した翌週(fx-32)、円は-0.3861の最弱へ-7ランク転落しました。「記録級の週の翌週は要警戒」はこれまで2例2勝の経験則です。加えて今週の円は7ペア全勝=「全方位型の勝者は翌週に崩れやすい」の対象でもあり、2つの経験則が同時に当てはまるという、当サイトの記録では最も反動リスクの高い状態にあります。

🇦🇺 AUD(豪ドル)── 2位 / +0.2286

前週2位 → 今週2位(±0)

6勝1敗で2位を維持。唯一の黒星はAUD/JPY(-1.882%)で、円以外の6通貨すべてに勝ちました。先週は「ドル以外の6通貨すべてに勝って2位」でしたから、2週続けて「首位の1通貨にだけ負ける2位」という同じ形です。

支えたのは9月2日(水)の豪4-6月期GDPで、前期比+0.4%(予想+0.3%、1-3月期は+0.3%)、前年比+2.1%(予想+1.8%)といずれも上振れしました。RBAの「高金利長期化」観測が強まり、先週の7月CPI上振れに続く追い風です。AUD/USDは週間+0.575%で15通貨ペア最大の上昇率、週間高値0.7214がそのまま75日間高値で2週連続の更新。SMA200乖離率+3.150%は15ペアで最大のプラスです。

今週の円全面高のなかで、AUD/JPYだけがSMA200(110.667円)を守りました(乖離率+1.706%)。他のクロス円がすべて4本のSMAの下へ落ちたことを考えると、これは豪ドル自体の底堅さの表れです。原油が+9.4%と急騰した週にNZドルが下げ、豪ドルが上げたことからも、豪ドルの強さは原油ではなく鉄鉱石・金属側の資源と国内指標に支えられていると見るのが自然でしょう。EUR/AUDは5週続落で、週間安値1.6108が2週連続の75日間安値更新です。

🇨🇦 CAD(カナダドル)── 3位 / +0.1143

前週6位 → 今週3位(+3)

5勝2敗で3位。負けたのはCAD/JPY(-1.905%)とCAD/AUD(-0.113%)だけで、3週続いた6位固定からようやく抜け出しました。CAD/NZD(+1.054%)、CAD/GBP(+0.617%)、CAD/CHF(+0.514%)、CAD/USD(+0.482%)、CAD/EUR(+0.227%)と勝ち方も一貫しています。

材料はWTI原油の週間+9.376%(91.22ドル、週間高値93.14ドルは約6週間ぶり高値)。8月31日のホルムズ海峡タンカー攻撃と9月1日のイラン革命防衛隊による攻撃表明が直接の引き金です。先週は原油-4.16%でCADが6位、今週は原油+9.4%でCADが3位と、久しぶりに教科書どおりの連動になりました。

ただし当サイトの記録では、「原油=CAD」の連動はこの5週で「切れ→戻り→また切れ→連動(順位は動かず)→連動(順位も動く)」と一貫しません。今週分かったのは、原油が±4〜5%程度動いても順位は動かず、+9%を超えて初めて相対順位に反映されたということです。連動の有無ではなく「どれくらいの値幅から効くのか」という見方に切り替えたほうが、実務的には使えそうです。なお原油高は日本の貿易赤字を通じて本来は円売り材料ですが、今週は日銀の利上げ観測がそれを大きく上回りました。

🇪🇺 EUR(ユーロ)── 4位 / -0.1191

前週4位 → 今週4位(±0)

4勝3敗で4週連続の4位。8通貨のなかで最も順位が動かない通貨という位置づけが、さらに固まりました。勝ったのはEUR/NZD(+0.809%)、EUR/GBP(+0.393%)、EUR/CHF(+0.331%)、EUR/USD(+0.266%)で、負けたのはEUR/JPY(-2.109%)、EUR/AUD(-0.297%)、EUR/CAD(-0.227%)です。

ユーロドルは1.1613で週間+0.269%と小幅反発しましたが、週間高値1.1641・週間安値1.1566と値幅は0.0075ドルしかなく、15ペアでも動きの小さい部類でした。位置関係は先週と変わらずSMA25(1.1592)・SMA50(1.1507)・SMA100(1.1563)の上、SMA200(1.1632)の下で、乖離率-0.162%と2週続けて200日線のすぐ下で止まっています。

今週これだけ円が動いたなかで、ユーロドルはほとんど動いていません。今週の相場が「ドル対ユーロ」ではなく「円対その他」だったことが、この1ペアによく出ています。EUR/CHF(0.9405、+0.331%)は2週続伸で週間高値0.9435が75日間高値を更新、3週連続で15ペア唯一の「真のパーフェクトオーダー」を維持しました。ユーロの強さというより、フランが売られ続けていることの裏返しです。

🇺🇸 USD(米ドル)── 5位 / -0.4391

前週1位 → 今週5位(-4)

首位から5位へ-4ランク、2勝5敗。勝てたのはUSD/NZD(+0.550%)とUSD/GBP(+0.127%)の2ペアだけで、いずれも下位2通貨が相手です。負けたのはUSD/JPY(-2.385%)、USD/AUD(-0.580%)、USD/CAD(-0.482%)、USD/EUR(-0.266%)、USD/CHF(-0.037%)。

週の前半はISM製造業・JOLTS・ADPがそろって下振れし、9月3日のウォラーFRB理事のハト派発言で早期利上げ観測が後退。この日のドル円は終値ベースで約1.8%の大幅安となりました。金曜の雇用統計+16.2万人(予想+5.5万人)で流れは反転しましたが、米10年利回りが100日間高値4.81%を更新してもドル円は156.75円までしか戻せず、そこからさらに押し戻されています。

この「戻せなさ」が今週最大の注目点です。ここ数か月なら、雇用統計がこれだけ上振れすれば2円は戻していた場面でした。金利差が開いてもドル円が戻りにくくなっているという変化は、来週以降を見るうえで頭に置いておきたいところです。なおCHFに負けたUSD/CHF(-0.037%)が、今週の「番狂わせ」を生んだ唯一のペアでもあります。28ペアで2番目に動かなかったペアが順位の逆転を作ったわけで、実質は引き分けと見るのが妥当です。

🇨🇭 CHF(スイスフラン)── 6位 / -0.4938

前週7位 → 今週6位(+1)

3勝4敗で6位。順位こそ1つ上げましたが、勝てたのはCHF/NZD(+0.479%)、CHF/USD(+0.037%)、CHF/GBP(+0.027%)と、いずれも0.5%未満の小さな勝ちです。対してCHF/JPYは-2.532%と大きく負けました。

フランは「利上げから最も遠い通貨」という位置づけが、そのまま弱さになっています。日銀が連続利上げに動くという観測のなかで、SNBは0%据え置きの見通しが続いており、CHF/JPYは週間安値191.473円で75日間安値を更新しました。EUR/CHFは3週連続で15ペア唯一の真のパーフェクトオーダー、週間高値0.9435は75日間高値で、USD/CHFも4本すべてのSMAの上を維持──どちらもフラン安という一点で共通しています。

CHFの過去7週推移は「8→4→7→7→1→7→6」。fx-34で首位に立った週を除けば、7週のうち5週が6位以下という定位置です。fx-34の教訓「フランの強弱はその週にドルが買われたか売られたかでほぼ決まる」は依然として有効ですが、今週はドル自体が5位に沈んだため、その説明では足りません。今週のフランはドルとの関係ではなく「日銀の利上げ観測の反対側にいた」ことで売られました。低金利通貨の弱さを説明する軸が、ドルから日銀へ移った週です。

🇬🇧 GBP(英ポンド)── 7位 / -0.5637

前週5位 → 今週7位(-2)

1勝6敗で7位。勝てたのは最弱NZD相手のGBP/NZD(+0.442%)だけです。負け方も一貫しており、GBP/JPY(-2.482%)、GBP/AUD(-0.742%)、GBP/CAD(-0.617%)、GBP/EUR(-0.393%)、GBP/USD(-0.127%)、GBP/CHF(-0.027%)。

ここで注目したいのは、GBP/USDが週間-0.122%で15通貨ペア中もっとも変動の小さい1週間だったことです。対ドルではほぼ動かなかったのに、対円では15ペア最大の下落(-2.492%)──この2つを並べると、「ポンドが売られた」のではなく「円が買われた」ことがはっきり見えます。英国発の大きな材料はなく、ポンドの7位は円高の受け身で決まりました。

クロス円の下げ方には順番があり、いちばん下げたのがGBP/JPY(-2.492%)とCHF/JPY(-2.451%)でした。どちらも「その国が利上げから遠い通貨」です。日銀が連続利上げに動くなら金利差の縮小幅がいちばん大きいのはこのあたり、という素直な反応になっています。今週の順位表は「どの通貨が買われたか」ではなく「日本との金利差がどれだけ縮むか」で並んでいたと読むと、GBP7位・CHF6位という並びも腑に落ちます。なおGBP/USDはSMA25(1.3531)を割り込みましたが、SMA50・100・200の上は維持しています。

🇳🇿 NZD(NZドル)── 8位 / -1.0689

前週8位 → 今週8位(±0)

2週連続で0勝7敗の完璧な全方位型NZD安。指数は-0.4431から-1.0689へさらに0.63ポイント悪化し、-1を超える水準まで沈みました。NZD/JPY(-3.021%)、NZD/AUD(-1.127%)、NZD/CAD(-1.054%)、NZD/EUR(-0.809%)、NZD/USD(-0.550%)、NZD/CHF(-0.479%)、NZD/GBP(-0.442%)と、7通貨すべてに負けています。

先週このレポートは「今週0勝7敗を記録した以上、当サイトの経験則からは反動での上昇も想定内」と書きましたが、反動は来ませんでした。むしろ悪化しています。理由は9月2日(水)のRBNZで、政策金利は2.50%→2.75%へ引き上げられたものの、示された利上げ経路が想定ほどタカ派でなく、10月の追加利上げ観測が後退。NZの卸売金利とNZドルがそろって下落しました。NZD/USDは週間-0.547%で2週続落、SMA25(0.5905)を割り込み、週間安値0.5805まで下げています。

NZドルの過去7週推移は「2→4→6→2→8→8→8」で、3週連続の最弱です。当サイトが「振り子の中心通貨」と呼んできた通貨が、ここへ来て下位に固定化しつつあるように見えます。ただし過去にも同じ局面はありました。fx-26で最弱2週連続だったNZDは、翌fx-27で首位へ+7ランク急反発しています。「下位固定化」という見立てこそ、当サイトが過去に一度覆された種類のものです。0勝7敗が2週続いた反動リスクは、依然として高い状態にあると見ておきます。

「円1強」と残り7通貨 ── 断層は1位と2位のあいだだけ

円 +2.34 / 残り7通貨平均 -0.26

順位表を上から見ると、1位JPY(+2.3418)と2位AUD(+0.2286)のあいだに2.1132ポイントという巨大な断層があります。一方で2位から8位までの7通貨は+0.2286〜-1.0689の1.2975ポイント内に収まっており、断層はこの一箇所だけです。

先週は「USD・AUDの2強」で断層が2位と3位のあいだにありましたが、今週は抜け出したのが1通貨だけ。この形はfx-strength-31(JPY +2.9756、2位NZDとの差2.62ポイント)以来5週ぶりで、いずれも主役は円です。指数レンジは1.2553→3.4107ポイントへ2.7倍に急拡大しました。当サイトはこれまで「指数の振れ幅が小さい週の翌週にいきなり記録が出る」ことを何度も見てきましたが、今週もその通りの展開です。順位の入れ替わり自体は+3/-4/-2の3通貨だけで、「順位はあまり動いていないのに、指数の水準は記録級」という点も押さえておきたいところです。

低金利グループ(JPY・CHF)── 1位と6位、3週連続の分裂

グループ平均 +0.92

JPY(1位+2.3418)とCHF(6位-0.4938)で指数差2.8356ポイント。fx-34で1位と7位、fx-35で3位と7位、今週は1位と6位と、3週連続で順位表の両端近くに分かれています。

fx-33で当サイトは「円とフランは安全通貨ではなくキャリートレードの調達通貨として並んでいる」と書きましたが、この括りは今週、完全に無効になりました。理由は単純で、日銀が「連続利上げ」に言及した瞬間、円は低金利通貨ではなくなる方向へ動きはじめたからです。SNBは0%据え置きの見通しが続いており、両者を分けたのは中央銀行の姿勢そのものでした。「低金利グループ」というくくりは、中銀のどちらかが動くと即座に壊れる──3週連続の分裂は、その括り自体を使うべきでないことを示しています。

オセアニアグループ(AUD・NZD)── 2位と8位、分裂が2週連続でさらに拡大

グループ平均 -0.42

AUD(2位+0.2286)とNZD(8位-1.0689)で指数差1.2975ポイント。先週の1.0895ポイントからさらに広がり、2週連続の完全分裂です。AUD/NZDは+1.127%で28ペア中5番目の上昇率でした。

先週このレポートは「オセアニア2通貨は一括りにできず、そろって動く週のほうが例外だと考えたほうが安全」と書きましたが、今週はその見方がさらに補強されたことになります。しかも今週の分裂は同じ日(9月2日)に両国の材料が正反対に出たという、これ以上ないほど明確な形でした。豪4-6月期GDPは前期比+0.4%・前年比+2.1%とダブルで上振れ、RBNZは利上げしたのに経路がハト派。原油+9.4%という共通の資源高があってなお1.30ポイント差がついたわけで、「資源国通貨」という括りも今週は機能していません。

欧州3通貨(EUR・GBP・CHF)── 3通貨そろってマイナス、唯一の全滅グループ

グループ平均 -0.39

EUR(4位-0.1191)・GBP(7位-0.5637)・CHF(6位-0.4938)で、グループ平均-0.39は3グループ中で最下位です。3通貨すべてがマイナス圏という「全滅」は、fx-30(7月24日週)以来になります。

内部の序列を決めたのは「日本との金利差がどれだけ縮むか」でした。ECBは利上げ観測が残るぶんユーロが4位で踏みとどまり、利上げから遠いポンドとフランが7位・6位に沈んでいます。実際、クロス円で最も下げたのはGBP/JPY(-2.492%)とCHF/JPY(-2.451%)の2ペアでした。ただし対ドルで見ると、GBP/USDは-0.122%で15ペア最小の変動──この3通貨は「売られた」のではなく「円の上げに巻き込まれた」と読むのが正確です。EUR/GBPが3週ぶりに上昇(+0.390%)したことも、グループ内でユーロが相対的にましだったことを示しています。
免責事項:本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。為替相場は様々なリスクを伴い、元本割れの可能性があります。投資の最終判断はご自身の責任においてお願いいたします。本記事のデータは執筆時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。