今週の主役は「円」と「原油」——しかも両方とも大きく動きました。水曜(9/2)、日銀の高田審議委員が札幌の講演で「半年に1回0.25%という想定から脱し、機動的に行う新たな局面に入った」と述べ、9月18日の利上げ観測が一段と強まりました。ここに木曜(9/3)の米ADP雇用統計+3.8万人(予想+4.7万人前後、今年1月以来の低水準)とウォラーFRB理事のハト派発言が重なり、円が全面高に。ドル円は週間始値160.141円から週間安値155.288円まで5円超も下げ、156.262円・週間-2.381%で着地して4本すべての移動平均線を下抜けました。円は6つの円ペアすべてで勝ち、GBP/JPY-2.492%・CHF/JPY-2.451%・EUR/JPY-2.121%・CAD/JPY-1.905%・AUD/JPY-1.809%。CHF/JPYは週間安値191.473円で75日間安値を更新しています。もう一方の主役が中東です。8/31にホルムズ海峡でサウジ産原油を積んだ大型タンカー2隻が攻撃を受け、9/1にはイラン革命防衛隊が米英のタンカー3隻へのミサイル攻撃を表明。WTI原油は週間+9.376%の91.22ドルまで急騰し、週間高値93.14ドルは約6週間ぶりの高値です。金曜(9/4)の米8月雇用統計は+16.2万人(予想+5.5万人)と大幅に上振れ、米10年国債利回りは週間高値4.81%で100日間高値を更新——それでもドル円は156円台までしか戻せませんでした。株式は円高と原油高の板挟みで、日経平均は4日続落の64,214円・週間-2.899%となり全SMAを下抜け。位置関係では、4本すべての移動平均線の上にある通貨ペアが先週の9ペアから3ペアへ激減し、逆に4本すべての下が1ペアから7ペアへ——わずか1週間で、為替の地図がひっくり返りました。
ドル円は156.262円で週間-2.381%(-3.812円)と急落しました。週間始値160.141円から週間高値160.393円をつけたのは週初だけで、そこから週間安値155.288円まで5.1円の下落です。移動平均線との位置関係は、先週の「4本のうち3本の上」から4本すべての下へ一変しました。SMA25(158.734円)・SMA50(160.495円)・SMA100(159.937円)・SMA200(158.442円)がすべて上方にあり、乖離率はSMA50で-2.638%、SMA200で-1.376%。SMA配列は「混在」のままです。注目したいのは週間安値155.288円で、75日間安値155.211円(7/31の日米協調介入時の安値)まで、わずか0.077円のところまで迫りました。
クロス円は全ペアが大幅安で、ドル円・CAD/JPYを含めた6つの円ペアすべてで円が勝ちました。下落率順にGBP/JPY(211.216円、週間-2.492%=15ペアで最大の下落)、CHF/JPY(192.827円、-2.451%)、EUR/JPY(181.473円、-2.121%)、AUD/JPY(112.555円、-1.809%)。CHF/JPYは週間安値191.473円がそのまま75日間安値で、直近75営業日の最安値を更新しました。位置関係の悪化も一気に進み、EUR/JPY・GBP/JPY・CHF/JPYは4本すべてのSMAの下へ。先週まで4本すべての上にいたEUR/JPY・GBP/JPYが、1週間で全部割り込んだことになります。唯一持ちこたえたのがAUD/JPYで、SMA25(112.898円)・SMA50(112.923円)・SMA100(113.182円)は割ったものの、SMA200(110.667円)の上は維持(乖離率+1.706%)。
EUR/USDは1.1613で週間+0.269%(+0.0031ドル)と小幅に反発しました。週間高値1.1641・週間安値1.1566と、値幅は0.0075ドル——15ペアのなかでも動きの小さい部類です。位置関係は先週と変わらず、SMA25(1.1592)・SMA50(1.1507)・SMA100(1.1563)の上、SMA200(1.1632)の下。乖離率はSMA200で-0.162%と、2週続けて200日線のすぐ下で止まっている状態です。SMA配列は「混在」のままです。
GBP/USDは1.3517で週間-0.122%(-0.0016ドル)と、15通貨ペアで最も変動の小さい1週間でした(EUR/GBPを含めても3番目の小ささ)。ただし細かい変化はあり、SMA25(1.3531)を割り込みました。SMA50(1.3451)・SMA100(1.3439)・SMA200(1.3442)の上は維持しており、乖離率はSMA25で-0.109%とごくわずかです。先週「SMA25まで0.2%しかない」と書いた水準を、今週はちょうど下に抜けた形になります。
AUD/USD(0.7203、週間+0.575%)は15通貨ペアで最大の上昇率となり、週間高値0.7214がそのまま75日間高値——2週連続で直近75営業日の最高値を更新しました。4本すべてのSMA(0.7112/0.7036/0.7076/0.6983)の上にあり、SMA200乖離率+3.150%は15ペアで最大のプラスです。一方のNZD/USD(0.5882、週間-0.547%)は2週続落で、SMA25(0.5905)を割り込みました。SMA50(0.5834)・SMA100(0.5846)・SMA200(0.5852)の上は維持しています。週間安値0.5805まで下げる場面もありました。
EUR/CHF(0.9405、週間+0.331%)は2週続伸で、週間高値0.9435がそのまま75日間高値——直近75営業日の最高値を更新しました。4本すべてのSMA(0.9365/0.9308/0.9243/0.9228)の上にあり、SMA配列も上昇パーフェクトオーダーを維持。3週連続で15ペア唯一の「真のパーフェクトオーダー」です。USD/CHF(0.8099、週間+0.074%)はほぼ変わらずで、4本すべてのSMA(0.8078/0.8087/0.7992/0.7931)の上を維持しました。一方USD/CAD(1.3835、週間-0.482%)は、先週取り返したばかりのSMA200(1.3838)を再び割り込み、4本すべてのSMAの下へ逆戻りしています。SMA200乖離率は-0.023%とわずかで、200日線に貼り付いた状態です。
EUR/AUD(1.6122、週間-0.297%)は5週続落で、週間安値1.6108がそのまま75日間安値——2週連続で直近75営業日の最安値を更新しました。4本すべてのSMA(1.6306/1.636/1.6341/1.6675)の下にあり、SMA200乖離率-3.316%は15ペアで最も大きなマイナスです。CAD/JPY(112.929円、週間-1.905%)は、先週まで維持していた4本すべてのSMA(114.231/114.567/114.882/114.500)をまとめて割り込み、4本すべての下へ。原油+9.4%というカナダドルの追い風があってなお、円高がそれを上回った形です。EUR/GBP(0.8591、週間+0.390%)は3週ぶりの上昇で、SMA25(0.8561)・SMA50(0.8549)の上を維持しつつ、SMA100(0.8599)・SMA200(0.8648)は依然として上方にあります。
日経平均は64,214円で週間-2.899%(-1,917円)と急落しました(データ日:9/3)。この日で4日続落です。週間変動は8/27終値(66,131円)との比較なのでご注意ください——先週の記事で触れた金曜8/28の終値66,405円と比べれば-2,192円(-3.30%)になります。週間始値66,104円から週間高値66,843円をつけたあと、週間安値63,773円まで3,070円の下落。移動平均線はSMA5(65,495円)・SMA25(65,942円)・SMA50(66,717円)をすべて下抜け、先週守ったSMA25も今週は割り込みました。レンジ内位置は先週の67.4%から49.5%へ低下し、100日間レンジのちょうど真ん中まで戻っています。月間は+0.402%とかろうじてプラスです。
NYダウは53,414ドルで週間-0.272%(-146ドル)と小幅安でした。ただし週の中身は荒く、中東情勢の悪化と長期金利の上昇で3日間に約800ドル下げる場面があり、週間安値は52,691ドル。そこから押し目買いが入り、週間高値53,746ドルまで戻したあと53,414ドルで着地しています。移動平均線ではSMA5(53,223ドル)・SMA50(52,945ドル)の上を維持しつつ、SMA25(53,546ドル)は割り込みました。レンジ内位置は先週の84.8%から79.4%へ低下し、月間は-1.720%とマイナスに転じています。
米10年国債利回りは4.78%で週間+1.356%(+0.06ポイント)と上昇しました。週間高値4.81%がそのまま100日間高値で、直近100営業日で最も高い水準を更新しています。週の前半はISM製造業・JOLTS・ADPの下振れで週間安値4.73%まで低下しましたが、金曜(9/4)の雇用統計上振れで一気に切り返しました。SMA5(4.78%)・SMA25(4.70%)・SMA50(4.63%)をすべて上回り、レンジ内位置は95.2%(先週94.8%)。月間では+3.617%です。
VIX指数は14.53で週間+0.693%(+0.10ポイント)と、ほぼ変わらずでした。ただし週の中身は往復で、週間安値13.80がそのまま100日間安値——2週連続で100日間安値を更新したうえで、中東情勢の悪化を受けて週間高値16.82まで跳ねる場面もありました。レンジ内位置は先週の3.3%から7.7%へ小幅に上昇。SMA5(15.06)・SMA25(15.21)・SMA50(16.20)はすべて上方にあり、月間では-8.096%です。
ビットコインは12,449,723円で週間-0.609%(-76,258円)と、ほぼ横ばいで着地しました(データ日:9/5)。週間高値12,819,915円・週間安値12,192,676円で、値幅は約63万円。8月半ばの急騰以降、1,220万〜1,290万円のレンジで3週目の高値もみ合いが続いています。SMA25(11,633,169円)・SMA50(10,994,375円)は大きく上回るものの、SMA5(12,466,202円)はわずかに下回りました。レンジ内位置は85.6%(先週85.8%)とほぼ変わらず、月間は+22.289%。100日間高値は12,964,102円で、あと4.1%です。
イーサリアムは383,407円で週間-2.550%(-10,031円)と、BTC(-0.61%)より大きく下げました(データ日:9/5)。週間高値405,489円は先週更新した100日間高値408,737円に届かず、週間安値376,215円まで押されています。SMA25(359,990円)・SMA50(331,990円)は上回るものの、SMA5(387,041円)を割り込み。レンジ内位置は先週の89.2%から84.9%へ低下し、BTC(85.6%)を2週ぶりに下回りました。月間では+27.239%で、12銘柄のなかでは引き続き最大です。
WTI原油は91.22ドルで週間+9.376%(+7.82ドル)と急騰し、12銘柄で圧倒的に最大の上昇率となりました(データ日:9/4)。週間始値84.69ドルから週間安値84.11ドルを早々につけたあとは一直線で、週間高値93.14ドルは約6週間ぶりの高値です。SMA5(89.90ドル)・SMA25(83.81ドル)・SMA50(80.95ドル)をすべて大きく上回り、レンジ内位置は先週の37.4%から55.1%へ——100日間レンジの真ん中を上抜けました。月間では+21.271%で、これも12銘柄で最大です。100日間高値110.93ドルまでは17.7%。
金は4,477.2ドルで週間-0.020%(-0.9ドル)と、数字の上ではまったく動いていません。ところが中身はまるで違います。週間安値4,292.2ドルまで急落したあと、週間高値4,537.8ドルまで245ドル戻すという、きれいなV字を描いた1週間でした。チャートでも、下ヒゲの長い足のあとに大きな陽線が続く形がはっきり出ています。移動平均線はSMA5(4,422.86ドル)・SMA25(4,413.92ドル)・SMA50(4,239.93ドル)をすべて上回る位置。レンジ内位置は先週の59.0%から56.1%へわずかに低下し、月間は+5.450%です(算定期間が進んだため先週の+11.63%からは低下)。
銀は66.82ドルで週間-0.261%(-0.18ドル)と、金と同じくほぼ変わらずでした(データ日:9/4)。こちらも中身はV字で、週間安値63.36ドルから週間高値67.81ドルまで4.45ドル(7.0%)戻して週を終えています。SMA5(65.87ドル)・SMA25(65.36ドル)・SMA50(62.01ドル)をすべて上回る位置は維持し、レンジ内位置は先週の35.6%から34.9%へ微減。月間では+7.602%です。100日間高値88.89ドルまではまだ大きな距離があります。
白金は1,828.5ドルで週間-1.034%(-19.1ドル)と、貴金属3品目のなかで唯一1%を超える下落となりました(データ日:9/4)。週間安値1,759.8ドルから週間高値1,839.0ドルまで戻したものの、金や銀ほどの戻りには届いていません。SMA5(1,793.32ドル)・SMA25(1,782.60ドル)・SMA50(1,698.16ドル)を上回る位置は維持し、レンジ内位置は先週の45.4%から44.7%へ微減。月間では+5.243%です。なおチャートを見ると、白金は6月以降データが飛び飛びになっている日が多く、日々の値動きの形は他銘柄ほど滑らかではない点にはご注意ください。
上海総合は2週連続で終値データが取得できませんでした。週間のレンジは始値3,926.53・高値3,995.18・安値3,926.50で、先週のレンジ(3,850.86〜3,958.03)からは上下とも切り上がっています。4,000の大台が視野に入る位置ですが、100日間高値4,258.86・安値3,741.11のレンジではまだ中央付近です。インドSENSEX(76,153、データ日:9/3)は週間-1.015%(-781ポイント)と4週続落。SMA5(76,778)・SMA25(77,689)・SMA50(77,455)をすべて下回る状態が2週連続で続いています。レンジ内位置は先週の63.3%から46.9%へ大きく低下し、月間は-2.902%とマイナス圏に沈みました。
チャートをざっくり3グループに分けると——
🟢 上昇したもの:WTI原油(+9.38%・91.22ドル・週間高値93.14ドルは約6週間ぶり高値・12銘柄で最大の上昇・月間+21.27%)、米10年利回り(+1.36%・4.78%・週間高値4.81%が100日間高値を更新・レンジ内95.2%)、VIX(+0.69%・14.53・週間安値13.80が100日間安値を更新、高値は16.82まで)、AUD/USD(+0.58%・15ペア最大の上昇・2週連続で75日間高値0.7214を更新・SMA200乖離+3.15%は15ペア最大)、EUR/GBP(+0.39%・3週ぶりの上昇)、EUR/CHF(+0.33%・75日間高値0.9435を更新・3週連続で15ペア唯一の真のPO)、EUR/USD(+0.27%・2週連続でSMA200に届かず)、USD/CHF(+0.07%・全SMA上を維持)
🔴 下落したもの:日経平均(-2.90%・64,214円・4日続落で全SMAを下抜け・レンジ内67.4%→49.5%・ただし8/27終値比。8/28終値比では-3.30%)、ETH(-2.55%・383,407円・SMA5を割り込みBTCを2週ぶりに下回る)、GBP/JPY(-2.49%・15ペア最大の下落・全SMA下へ)、CHF/JPY(-2.45%・週間安値191.473円が75日間安値を更新)、USD/JPY(-2.38%・156.262円・4本すべてのSMAを下抜け・週間安値155.288円は75日間安値155.211円まであと0.077円)、EUR/JPY(-2.12%・全SMA下へ)、CAD/JPY(-1.91%・全SMA下へ)、AUD/JPY(-1.81%・SMA200だけ死守)、白金(-1.03%・貴金属3品目で唯一の1%超の下落)、インドSENSEX(-1.02%・4週続落・月間-2.90%・レンジ内46.9%)、BTC(-0.61%・高値圏で3週目の横ばい・レンジ内85.6%)、NZD/USD(-0.55%・SMA25を割り込む)、USD/CAD(-0.48%・SMA200を再び割り込み全SMA下へ)、EUR/AUD(-0.30%・5週続落・2週連続で75日間安値1.6108を更新)、NYダウ(-0.27%・3日で約800ドル下げる場面も戻す)、銀(-0.26%・63.36→67.81ドルのV字)、GBP/USD(-0.12%・15ペアで最小の変動・SMA25を割り込む)
🟡 方向感を探っている:金(-0.02%とほぼ変わらず。ただし4,292.2ドルまで4.7%下げてから4,537.8ドルまで5.7%戻すV字)、上海総合(2週連続で終値データが取得できず・週間レンジは3,926.50〜3,995.18と上下とも切り上がり)
ひと言でまとめると、「日銀の『機動的な連続利上げ』発言で円が全面高、ホルムズ海峡のタンカー攻撃で原油+9.4%」という週でした。起点は水曜(9/2)です。日銀の高田審議委員が「半年に1回0.25%という想定から脱し、機動的に行う新たな局面に入った」「連続利上げは一般論としてあり得る」「利上げ幅も0.25%にこだわらない」と述べ、9月18日の利上げとその先のペースまで織り込みが進みました。ここに木曜(9/3)の米ADP+3.8万人(今年1月以来の低水準)、ウォラーFRB理事のハト派発言、新規失業保険申請の増加が重なり、日銀のタカ派とFRBのハト派が同じ方向に効いてドル円はこの日だけで約1.8%安。週を通しては160.141円 → 155.288円と5円超の下落で、156.262円・週間-2.381%、4本すべての移動平均線を下抜けました。円は6つの円ペア全勝で、下げが大きかったのはGBP/JPY-2.49%・CHF/JPY-2.45%——どちらも利上げから遠い通貨です。もう一方の主役は中東で、8/31にホルムズ海峡でサウジ産原油のタンカー2隻が攻撃され、9/1にはイラン革命防衛隊が米英タンカー3隻へのミサイル攻撃を表明。WTIは週間+9.376%の91.22ドル、週間高値93.14ドルと約6週間ぶりの高値をつけました。先週の-4.16%からの反転で、2週間で79.62ドル→93.14ドルの17%という振れ幅です。金曜(9/4)の米8月雇用統計は+16.2万人(予想+5.5万人)と大幅に上振れ、米10年利回りは週間高値4.81%で100日間高値を更新しましたが、ドル円は156.75円までしか戻せず、その後155.34円まで押し戻されています。米金利が100日間で最も高いのにドル円が週間-2.38%という組み合わせこそ、今週の本質です。株式は円高・原油高・金利上昇の三重苦で日経が4日続落の-2.90%、全SMAを下抜けてレンジ内49.5%まで低下。ただし9/3は値上がり141銘柄・値下がり82銘柄で、弱さは一部の値がさ株に集中していました。貴金属は金-0.02%・銀-0.26%・白金-1.03%と落ち着き、金と銀は週前半に急落してから週後半に地政学リスクで買い戻されるV字。位置関係の変化は今年でも屈指で、4本すべてのSMAの上にある通貨ペアは9ペア→3ペア、下は1ペア→7ペアと、1週間で地図がひっくり返りました。来週は9/11(金)の米8月CPIが最大の焦点です。焦点は「米CPIで金利差が開き直すか、それとも日銀の連続利上げ観測が勝つか」。市場が見るドル円の予想レンジは153.00〜158.00円で、今週のように金利差が開いてもドル円が戻らない状態が続くなら、7/31の協調介入時安値155.211円——あと0.077円——が現実的な射程に入ってきます。ここは単なる節目ではなく、当局が守った水準を市場が自力で割れるかという試金石です。
今週の為替をひとつの材料で説明するなら、これです。水曜(9/2)、日銀の高田創審議委員が札幌市での講演で、「利上げについて、私は2026年を従来の半年に1回、0.25%という想定から脱し、機動的に行う新たな局面に入ったと考えている」と述べました。さらに「連続利上げは一般論としてあり得る」、「利上げ幅も0.25%にこだわらず機動的に対応することが必要」との認識も示しています。市場がこれまで想定していたのは「半年に1回・0.25%ずつ」というゆっくりしたペースでしたから、その前提そのものが崩れた形です。9月17〜18日の会合で0.25%の利上げに踏み切り、10月以降も経済・物価次第で追加利上げを排除しないとの観測が広がり、日米金利差の縮小を織り込む形で円買いが加速しました。ドル円は160円台前半から158.20円前後まで、約2円の急落となっています。
先週「米イラン交渉の進展観測で原油-4.16%」と書いたばかりですが、今週は完全に逆でした。月曜(8/31)、ホルムズ海峡でサウジアラビア産原油を積んだ大型タンカー2隻が、正体不明の飛翔体による攻撃を受けます。この時点で米軍が約1か月ぶりにイランを攻撃しており、イラン側も報復姿勢を強めていました。翌火曜(9/1)にはイラン革命防衛隊が「ホルムズ海峡などで米英の石油タンカー3隻をミサイル攻撃した」と表明し、原油は一時前日比3%超の上昇。その後もイランがヨルダンやバーレーンの米軍関連施設を攻撃したと報じられ、サウジアラビアの国営海運会社が保有する石油タンカーもイランから攻撃を受けたことが明らかになりました。WTI原油は週間+9.376%(+7.82ドル)の91.22ドル、週間高値93.14ドルは約6週間ぶりの高値です。
週の前半、米国の指標はそろって弱い結果でした。火曜(9/1)の8月ISM製造業景況指数は54.6で、7月の55.6から予想以上に低下(8か月連続で50超は維持)。内訳の雇用は51.2と、7月の52.8から下がりました。同日の7月JOLTS求人件数は727.1万件で、6月の718.2万件からは増えたものの予想は下回る結果です。これを受けて米国債が買われ、長期金利が低下してドル買いが後退しました。翌水曜(9/2)の8月ADP雇用統計は+3.8万人で、予想の+4.7万〜4.8万人程度を約1万人下回り、2026年1月以来の低水準。セクター別では製造業-1.7万人、専門・ビジネスサービス-1.6万人と弱さが目立ちました。木曜(9/3)にはウォラーFRB理事が「ディスインフレ傾向が継続すれば、政策金利の据え置きを支持する」と発言し、早期利上げ警戒が急速に後退。新規失業保険申請件数の増加や貿易赤字の拡大も重なって、この日のドル円は終値ベースで約1.8%の大幅安となりました。
金曜(9/4)の8月米雇用統計は、週前半の流れをひっくり返す強さでした。非農業部門雇用者数は+16.2万人で、予想の+5.5万人を大幅に上回り、過去5か月で最大の伸び。内訳は民間部門+12.7万人・政府部門+3.5万人で、前回の減少の主因だった政府部門もプラスに転じました。失業率は4.1%と前月から変わらず、平均時給は前月比+0.3%・前年比+3.1%です。この結果を受けて利上げ観測が再燃し、米10年国債利回りは週間高値4.81%——100日間高値を更新しました。ドル円も156.75円まで上昇しています。ただし、そこからは日銀の利上げ観測と当局の介入警戒感で円が買い戻され、155.34円まで押し戻される場面がありました。
株式にとっては、材料が全部逆風でした。米国では中東情勢の悪化と長期金利の上昇でNYダウが3日間で約800ドル下げる場面があり、週間安値は52,691ドル。その後は売られすぎからの押し目買いで戻しています。日本株はさらに厳しく、日経平均は9/3まで4日続落。この日は前日の米株高と売られすぎを手がかりに寄り付き後に400円ほど戻す場面もありましたが、実需の買いが続かずマイナス圏に沈み、前日比-111円の64,214円で引けました。原油高と金利上昇が重荷で、しかも円高が輸出関連にのしかかる形です。もっとも、225銘柄のうち値上がりは141銘柄、値下がりは82銘柄で、指数の弱さは一部の値がさ株に集中していました。バークシャーの「長期保有」意欲を受けた5大商社株の上昇や、円高が追い風になったニトリの半年ぶり高値など、内需・商社は逆に買われています。
・9/11(金)米8月CPI──来週最大のイベント。今週の雇用統計が強かったぶん、物価まで強ければ米長期金利の上昇基調が続きます
・9/11(金)ミシガン大学消費者態度指数(速報値)──前回8月は51.0と大きく下振れました
・米財務省による国債バイバック(買い戻し)の増額──8/19の倍増発表に続く需給面の材料で、来週の米長期金利を左右します
・9/17〜18の日銀金融政策決定会合に向けた要人発言──今週の円高の起点はここです
・そのほか、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオ変更の可能性が円買い材料として意識されています
市場が見ているドル円の予想レンジは153.00〜158.00円で、下値を探る展開が想定されています。焦点は「米CPIで金利差が開き直すか、それとも日銀の連続利上げ観測が勝つか」。今週のように金利差が開いてもドル円が戻らない状態が続くなら、7/31の協調介入時安値155.211円が現実的な射程に入ってきます。